2018
01.17

地上に出ましたら、すっかり様変わりした街が出現したのでございます。

20年前の私メは、この出口から太子堂へ向かい淡島通りを抜け、お女性のもとへと急いだものでありました。

「ここは、どこなのだ」
坂の勾配も以前よりは、心なしに急なのでございます。

「桜が満開!」
何台か前の携帯に、そのような送られたメールが残されているかもしれませぬ。

おそらくお女性は、私メを、ここで見送った後、暗渠となった桜の通りを帰っていって、発狂したよーに咲く花を見上げたのだと思うのでありました。

みんなマボロシになってしまっているのであります。
裏通りにも知らない店々が立ち並び、釣り堀も消えておりました。
鳥焼きを食っていたら、突然に眩暈に襲われカウンターで悶絶した地下の飲み屋もございませぬ。

ただ、春雨がしょぼ降るばかり。

1996年でした。
「2000年ってどういう年なんだろうか」
「あと20年したらオノさんも年寄りだね」

すでに初老でした。そして、いまは老人。

サヨナラの前にいつも入った、その頃はオープンしたばかりの、コーヒー屋の前を通りましたら、その店もよぼよぼでありました。

目に見えぬ結界があり、そこから先に足を踏み入れることはできません。いけない、いけない。

なぜかタバコがむやみに吸いたくなるのでありました。