2018
06.26

予定を消化して、ふたたび東京へ。
温泉地の旅館でギッてきた読みさしの文庫本から目をはなすと、新幹線の窓外を、緑の草原が広がっておるのでありました。
「夏かぁ…」

ショップサイトの担当者から「パワーボックスのキットをUPしました!」のメール、週刊大衆からはエロおまんちゃんについての取材の予定のメールも、バッグには「奇門遁甲『海底眼』」に取り掛かったばかりのPC。

また、金持ち前夜祭Ⅱも、あと5名で締め切らなければならなくなっておるのでありました。

「いろいろと面倒なことばかりだなぁ」

♪東京へは、なんども行きましたね、キミの住む花の東京♪
懐かしい音楽が脳みその内側を流れるのでありました。

面倒ではあっても、楽しいことがありそーであります。
もともと楽観的なところがございまして、最悪な出来事が発生しても、これは吉兆のためには必要なことなのだと思ってしまうのであります。
反省心のなさは、どーうやら、そのヘンが原因しているのかもしれませぬ。

時間がとれずにストップしている十傳セミナーもそろそろ再開しなければなりません。
実践鑑定講座を計画はしているのであります。これは一定の十傳スクールの受講が条件となりそうですが、その前に、手相の最終回もしないといけませんね。

6月も終わろうとしています。来月の今頃は、いよいよ8月だと恐れている頃でしょうか。とすれば、秋は近いのであります。

いいぞ、いいぞ。

 

2018
06.24

暑いのにスーツを着込んで法事に臨んだのでございます。

もうラーメンも焼肉も汗をかくばかり。
そこで盛岡冷麺屋に立ち寄ったのでありました。

この日は冷麺祭り。
普通は780円だったかのヤツが390円。

冷麺はちと苦手だったのですが、
「イケるではないか」
なのでありました。

親族の面々も「んん、美味い」と、冷たいスープをすするのでありました。

音を立ててすすれば美味いんです、と語ったところ、「んだね」。都会からお見えの方も「お行儀が悪いけれど、ほんとだ」と。

音を立ててすすらねばならないのは、グラス一杯にそそがれたモッキリ。表面張力でこぼれを我慢している冷酒は、お上品にすすつてはいけません。ズズズッとやらないと。
音を立てないといけない、あと一つは。
それは今回はヤメておきましょう。

さて、法事の参加者には中学生のお嬢ちゃんがおりました。将来の美貌が激しく期待できる容姿であります。
セーラー服で、私メの隣席で、「ホントですか」と冷麺をすすっていたのでありました。

と、遅れて入ってきた、過去は美貌だつたかもしれぬ叔母が、
「あれカナちゃん。いつここに来たの?」

パーキングでたったいま見かけたというのです。

「どこへ行くの、カナちゃん」の呼びかけに、彼女は振り向いて店のドアを指さしたというのであります。

そんなはずはございません。
彼女は私メの隣の、奥まった席にずっと座っていたのでありますから。
もっと正確に言いますと、車を降りてから、私メのそばを離れなかったのであります。

「ヤダァ」
身を隠すそぶりをいたしました。思いがけない柔らかなふくらみをスーツ越しに感じられましたが、そのお話も今回はカットいたしますです。

それぞれの麺をすする音が途絶えました。

「何かの間違いだよ」
叔父の声に「んだんだ」「そーよそーよ」とこたえ、「辛ーい」の誰かの声で、何事もなかったかのよーに、ふたたびズズッズズーッ。

お勘定をしながらレジで店内を見回しましたが、セーラー服姿はカナちゃんの他には、誰もいないのでありました。

2018
06.22

一匹の蟻が群れからはなれ花の蜜を吸っているのでありました。

モリオカの実家の庭は、しばらく見ぬうちに雑草がはびこり、朝から草取りに忙殺しておりました。その手を休め、コンビニで煙草を買おうと、坂道の途中で、花とその蟻を目にしたのでありました。

真綿のような柔らかい花に包まれ、私メが近づいても無心に蜜をすいつづける蟻はすこし淫らでもございます。

「後悔することがあれば、それは子供にたいしてかな」
ひとりのお女性の言葉が思い出されたのでございます。
「やさしく扱われようと、そればかり考えていたから」
別れて、かなりしてから、ある会場で再会し、ティカップをまわしながら、お女性はホテルの庭に咲いている花を眺め、
「ほんとよ」

目を離したら蟻の姿をとらえることはできないのでした。

ありふれた出来事の一つだったのかもしれません。

郷里のモリオカの自宅付近の坂道は、溜池山王のティールームに続くような錯覚をおぼえるのでありました。ぜったいにそんな光景ではないにもかかわらず。

意識とは奇妙なものであります。
茅ヶ崎の坂道も、神楽坂の坂道も、団子坂の勾配も、一本につながって感じられることがございます。そして、意識の中ではどの坂道も長くつづいているのであります。

「電話してきた子? お菓子がどこにあるかって」
「もう二十歳になったの」
うす暗い室内で裸の胸をさらけ、しかし、声だけは母親に固まっていた光景も、いわば暗闇の官能の途中でちょっと振り向いた坂道ありました。
庭作業はエロチックなのであります。
昨年とは違う、三年前とも違う、毎年、異なるエロスが、おなじ庭に宿っているのでございます。

すこしずつ庭は変化し、だから庭も坂道の途中とも申せますです。

庭の向こうには納屋があり、いま納屋を壊し、開運増築を業者とつのっておりますが、それも坂道。
これ以上、屋敷を広げてどうするのだと思うのですが、家もまた坂道。
長い回廊をもうけ、不思議な階段を設置し、家は龍の如く動き出し、時という坂道をすべろうとしておりますです。

母親から戻ってきたお女性の、量感のある腕のわきで、テーブルに投げ出されたその携帯が二回転ほどまわって…。いまでも回り続けているのではないかという気がしてなりません。