2018
08.17

秋の味覚のチューハイが揃い始めました。
梨の羅・フランスのお味、マスカットのお味。
グビッとやりますと、過去の恋の記憶がほろほろとほどけてくるのでございます。

「もう8年以上も経っているのか」
チューハイの酔いが、さらに記憶をそのときだけ鮮明にするのでありました。

「恋だって、ははは」
そのお女性の高笑いもよみがえります。「恋だなんて、ちょっと違うんじゃないの」と。

まさか、まさか、杏里の曲の「あなた、わたしのマボロシに恋したの♪」を下敷きに笑っているんではなかんべね。
と当時は思いましたけれど、

「暑い暑い、まだ暑いよね」
薄目に開けた窓には、積乱雲がばかに青い空に展開していたところが思い出すわけで、となると昼下がりの情事だったかもしれませんです。
暑い暑いと上気した顔と、秋味のチューハイがモンタージュされまして、老身でも心が騒ぐものがございますです。

どの言葉も、
「そんなに貶めたいの?」
と棘のある意味に受け取るよーになりますから、
隙間からのぞく、ちいさな空を仰ぎながらチューハイを呷るよりほかはなく、
そして、ふたたび汗にまみれることになるのでございました。

「まだ、まだ駄目」
お女性は、果てた後の私メをおそれるよーに、乳房を粟立てながら、終了の時を繰り延べさせるのでありました。

ガラガラ声に喉をかすれたお女性が駅の雑踏に消えていく姿。
口の中に残った秋味のチューハイ。

黄昏の空には崩れた積乱雲。

と、記憶はときには深く、とくには淡くよみがえるのでございました。