2018
11.20

運命とは突如として変化があるものでして、この日の不意に入った鑑定を運命だとすれば、私メの一日は、朝の予定とはまったくかけ離れたものになりましたです。

朝の予定では、自宅の仕事部屋で原稿を作成するはずのものでした。
人生に置き換えますと、平和で平凡な静かな一生だったはずです。

ところが、お昼過ぎに、「今日、鑑定をお願いします」という電話が入ったところから、忙しい一日へと変化していったのでございます。

どーでもいい部屋着を脱ぎ捨て、
「どれにするか」
と服を選び、トワレで胸をしめらせ、電車に飛び乗ったのでありました。
そーして、鑑定を終えたのが18時。
それから、自宅でやるはずだった原稿の作成をいい加減なところまで進めまして、

「おお、9時か」

空腹に気づきました。外で食うのも億劫だったので、お客様の手土産の、利尻ラーメンをゆで、それにトトロ昆布と海苔を散らし、コンビーフの缶を開けたのでございます。
もう帰宅の気持ちはなくなり、原稿作成の続きもしたくはなく、さりとて、お女性を誘って「飲もうか」でもない。いや、誘われたらOKなのではありますが。

乳房と仕事を天秤にかけ、
「そーだ、奇門遁甲のテキスト作りをしよう」
と決めたのでございます。

これを、人生に置き換えると、一本の電話によって、30代半ばから人生の転機が到来し、平凡な暮らしから、不思議な生活に足を踏み入れたということになりましょうか。
ふつう人生が一変するのは、愛欲に溺れるというのが一般的ですが、そうはならなかったというのは、まるで山奥に入り、仙人のような後半生を送ったようなものであります。

仙人のようだとは申せ、明け方、朝立ちを握りしめて目覚めたのでございますから、生臭坊主に近いとも申せますです。
「トロロ昆布とコンビーフのなせる業か」
無邪気に勃起した亀頭付近を親指の腹でさすりつつ、
「やはり誘うべきだったか」
とかるい後悔をしている様は、晩年に老人ホームのベッドの上で、若い頃にし忘れたあれこれを諦めつつも悔やむ姿に似ているとも申せますです。

一日の運命は、一生の運命の凝縮ではあるまいかと常日頃おもっているわけでありました。

あれほど充実していた足の両親指の真ん中にあるものも、小便によってたちまち首をすくめたという次第でございます。