2019
06.03
06.03
魚をおろすのは得意でありまして、さっそく、砥いだ包丁で、頭部を切り離し、腹を割って臓物をえぐり出してから、尾の部分から三枚おろしにしたのでございます。
まるでお女性の衣服をていねいにはぎ取るように、でございます。
わずかな血が指を染めましたです。
包丁の刃の角度を背骨にあわせつつ、ゆっくりと、しかも素早さも肝心。
中骨をいくつかに切断し終えたあとは、粗塩をふるのでございます。
これで味は格段にあがることを、若い時に魚屋でアルバイトをしてた時に教わっているのでございます。
岩塩もございますが、海から獲れたものは、海の塩がイイのであります。
料理も恋も占いも、根っこのところで同じではあるまいかと、手前味噌に思っている私メであります。
相手のことを思うという一点に於いてであります。
「美味しい」
「快楽っ!」
「運が上がった」
おのれを捨て、相手のために尽くすわけでありますから。
脂ののった筋肉が、舌の上でとろけるのであります。
つまみは溶けるチーズに白ワイン。
ヒレの長細い骨がすけるまで舌を絡めて味わい尽くすのであります。
箸を長く持つようにいたしますと、不思議にお味も格別でございます、何故か。