2019
07.24

別れてから、一人であるく街は、寒い解放感で、悪くはありませんです。

街をブラついていると、
「ああ、ここは…」
時間を飛び越え、まだ一緒にいたい愛着と、はやく自由になりたい軽い苛立ちの濃縮した気持ちがリアルに戻ってきたりいたします。

「もう帰りたいんでしょう」
お女性に片方の気持ちを図星され、あわてて別の気持ちの証拠として上腕を鷲掴み、「今夜も返したくないのに」言葉が社交辞令になっているなと気づき、しかし、「お茶、飲もっか」の試しの誘いを避けたいわけで、駅まで向かうのであります。

そして、ひとり。
思いっきり放屁してリラックスしたい衝動にかられるのでありました。
空気を震わせるほどのコントラバスのよーな屁を。

何年たつのだろう。
声も生年月日も会話もオッパイも覚えているのに、顔が消えているのであります。

あの時、歩きながら「ありがとう」メールが届き、果物屋のそばで、三行の文章に皮肉の裏があるのかどーかを検討し、気の利いた返事の言葉を探しているうちに城跡まで来てしまったのだなぁと思い出すのでした。

関係が腐れるまであと三か月たらずのことでした。

駅で、バス停で、カフェで、部屋のドアで。
サヨナラする場所はあんがい決まっておりますが、サヨナラした後の、自由な虚脱感は、意識して味わってみると、それはそれで恋愛の一つなのだと面白いのであります。