2020
10.22

紅葉見物のついでに秘湯に立ち寄りましたです。
例年ですと、人影もまばらな混浴露天風呂は中古の男女で賑わっておりました。

これもGO TO TRAVELという奴でありましょーか。

風呂上がりの薄着をまとったオバハンは妙に色っぽく、つい胸元に目がいくのでありました。
首から上はえげさつない皴が刻まれておりますのに、首から下はほんのりと桜色。脂身のシャブシャブ肉のよーに感じられたのであります。

おそらく私メと同年代あたり。

老婆の桃花煞とは、このことでございます。

真昼の雨月物語。

旧式の中古のベンツ。

若い頃、美女に、「どーして、あんたみたいな男に…」と袖にされた時に、
「40年後を見ておれ」
心で叫び、傷つくことを回避した憶えがございます。
「今は新車のベンツかも知れないが、40年たったら」
と。

が、目のあたりにするおぞましい光景は、使い古したベンツどころか、いまだに新車のフェラーリと自分を錯覚しておるよーであります。
神は己が姿を直視させぬよーに作り給えたわけが解けました。
でなければ舌を噛み切っていたでしょーから。

ここで若い美女を混浴風呂に投入したら、どーいうことになるのだろう。

キンタマも隠さずにくつろいでいる男どもは、白濁の湯に軽い勃起を隠すのかもしれません。
そして旧日本兵が朝鮮女を見るよーに、あるいは幼稚園の父兄会に参加したオヤジが保母さんを見るよーに、血走った劣情の目で若いお女性を視姦するに違いございません。

また古びたお女性は、デパートの紳士売り場のパートのオバハンのよーな意地の悪い視線を、若いお女性に浴びせるかもしれませんです。
そーしてタオルで胸元を押さえ、露天の隅にひと塊となって吹き溜まることでございましょー。

年齢を重ねる無常さを、カラスが遠巻きに眺めておるばかりでございました。

それにしても湯上りのタオルを旧式の脱水機にかけているオバハンの奇妙なお色気は、どこか愛おしさにも通じるものがございましたです。

2020
10.22

初茸を求めに産直を回りましたが皆無。去年も口にしておりません。私メの好物の一つ。

「まてよ」
ふと頭を過ったのは、あの場所であります。
「あるかもしれない」

クルマで90分ほどの未舗装の末の竹やぶに停車させ、あの場所まで記憶をたどりながら踏み入ること20分。

突如として日の当たる空間に。

「あった! あった、あったあった」
初茸が密在して光っておりました。しかも倒木にはナメコが蛇のように連なっておるではありませんか。
お見せしたいのですが、その場所を特定されては困ります。

キノコというものは毎年、ほぼ同じ場所に発生するものであります。キノコ採りの達人は、その場所をけっして口外しないと聞いておりますです。

画像は別の場所であります。雰囲気として入れてみたまで。

秘密の場所は、私メも口に出さないことにしておるのでありました。

「どこでとりましたか?」
と訊かれても、顔も知らないお方にペラペラと喋るはずもございません。自分で苦労して発見した猟地でございます。嘘をかたるか、煙に巻くことにしておるのであります。

そしてそれは世の常識。

訊かれたら教えるのが当たり前だという非常識を知らないお方が多すぎるのであります。「ぜひご教授を」などと調子の良いことをほざかれて正確に教えるバカがどこにいるでしょーか。「ほいほい」と嘘をつく快感。正確に教えるわけがございません。「バカたれ」んだからいつまでたっても運が悪いのだ。

そーやってキノコ採りの達人は、いくつかの猟場を財産としてキープし、どんなに不漁の年にでも、それなりの猟果を上げてきているのでありましょー。

天然物のキノコは、死ぬほど美味しいのですが、下処理が面倒。
ゴミを洗い流し、虫がいるので、逆さにして襞に巣食う虫を追い出し…と1時間以上も下処理に時間が費やされるのであります。
それから鍋でことこと。

「やっぱり秘密のあの場所は秘密にしておくべ」
と老母。

そして、私メはキノコのことを語ろうとしているのではございません。