2020
10.26

春の花はハツラツとした若いお女性を連想いたします。それに対して秋の花は40代の楚々としたお女性の化身のような気がいたします。

秋になってから美が開花する花。
奇たるべき冬を前にして、どことなく物悲しさが香り立ちますです。

そんな秋の花を庭から摘んで、乾燥花の作成をしましたです。
もちろん奇門遁甲の座山につかう乾燥花でございます。
逆さに吊るしましたら、真っ黒い家にとても似合いましたです。

やがて山茶花が咲き、突如としてモリオカは白い世界へと一変するのですが、その冬までの間、秋の花はせつなく庭の隅を彩るのでございます。

紅葉に目を奪われた視線を、ふと足元に移しますと、そこに、
「やっと気づいてくれたのね」
あきらめかけたため息が聞こえますです。
「摘んで、いいからぜんぶ摘んで…」
春や夏の花とはちがい、茎はすでに乾いておりますから、簡単に折れて、私メの抱えた花のひとつに加わるのでありました。

「キミが10のうち7まで来ていたら、オレは8だよな」

すると秋の花は言うのでありました。
「7と8を足すと15」
15歳の時に逢ったわね。それからずっとわたしたちは15歳のまま。
「だって」
彼女はか細く付け加えます。
「8×8は64。7×7は49。差はいくつ?」

答えますと、
「ほらね。だから、15のままで秋になったの」

連続する数の合計は、それぞれの二乗の差に等しいという、カバラ秘術のラビリンスに酔いながら、両手に摘んだ花々を、ひとつひとつ丁寧にセットしていくのでありました。