2021
01.18

自粛の呼びかけに背を向け、県をいくつかまたいで郷里のモリオカにたどり着いたのでした。
待っていたのは、老母の、
「年末から風呂に入ってない」
貯湯のタンクが、寒さのために凍っていたのであります。

オール電化に変えたので、覚悟はしておりました。

ただちに業者が駆け付け、
「音声で水張りのメッセージがあったはずですが…」
の確認に、老母は、
「そったな声は出ていたよ。そのたびに『分かりません』と答えてたのさ」

業者は雪降るなか、そとで作業を始めたのでありました。

もうひとつ、門扉が歪んでいたのであります。
雪や寒さのためか?
「いや、こ、これは…」
やはり駆け付けた別の業者が、
「これは、除雪車の羽根が当たったためですよ。そうとうに強い力が加わらないと、こうなりません」
の言葉を聞いた瞬間、頭の血管がプチプチと切れましたです。

先月、トラブルした親戚のバカ息子、マー坊がお節介をしたためだと察知したからであります。
大きな除雪車が奴らの門のない家の前に置かれていたのでありました。

しかし――。
「まぁ、いいさ、春にまた新しい門を作ってください」
ことにしたのでありました。これも運命。

暗くなってから業者たちは帰っていきましたが、
「何を食う、今夜」
しかし、こんどはガレージの前は、雪がつもっており、車での買い出しは不可能なのでありました。

幸いなことに、というか茅ヶ崎の自宅を出るときに、
「面倒な予感がするなぁ」
と感じて、お客様から贈られた、タラと白子をジップロックに入れ、持参してきたことを思い出したのでありました。

さーて、これから雪かき。
今夜、すこしでも雪をどけていないと明日の朝は往生しそうな、雪の降り方なのであります。

「明日は、母が使う前に風呂に入らないといけないな」
一か月も風呂に入っていない老母のあとの風呂を想像して、ひとり苦笑するのでありました。