2021
02.25

駆け足で2月が逃げるのであります。

捨て置いた植物も春の息吹に新しい葉を広げているのでございます。

春は苦手でありますが、唯一の救いは、お女性が綺麗にみえる季節。
冬のゲレンデ、夏の砂浜でも、キレイな錯覚をしては失望の経験がたくさんありますけれど、春は、
「おおぅ!」
ニヤニヤしてしまうのであります。
たとえマスクで口元を覆っていても、

モリオカに戻って二日目。
コンビニに行きましたら、蘭丸さんが、
「おや?」
おもだちが優しく、そして丸みを帯びているのでございました。
しかも、男の客と笑顔で会話しているではございませんか。ニタニタしながら。
口紅もさしております。その口紅が付着した歯をだして笑っておるのであります。
こころなしか胸元もふくらみが。そのふくらみを晒すよーに、半身をねじって、男に笑いかけておるのであります。
男客が帰りしな目配せしあったところを見逃しはいたしませぬ。
じゃあね、と親しげに片手をあげたばかりか、蘭丸さんはドアが閉じても、なおしばらくサヨナラの手を上げたまま…。
「やったな…!」
反射的に直感したものでございました。

すると、蘭丸さんは、お菓子の棚に顔の半分を隠して観察していた私メに、するどい眼差しを投げかけるのでございます。
「なによぉー」
とでも言いたげな、そのいちべつの冷ややかなこと。舌打ちまで聞こえそうであります。
「ウザいんだよ、おまえは」
この想いを、この純愛を、とおに見透かしていたのでございましょーか。

いたたまれませんでした。

私メは生え際に浮かんでいる老人性のシミを、小皺のよった手の甲で隠すよーに、コンビニを小走りに立ち去るのでありました。
傷ついた雛が癒えて飛んでいったかのよーでした。
春先の青空に吹く風は、残酷なまでに冷たいのでございました。
うつくしい関係をきずこうとしていたのに、どんなにか大切にしよーとおもっていたのに。
「よごれた、よごれてしまった、よごれた、よごれた」
残雪がきたなく残る歩道を、私メは、やみくもに歩くのでございました。

では、3月のボイドタイムでございます。

2021年02/26(金)20h33m in獅子 ~  /27(土)02h08m
2021年03/01(月)00h59m in乙女 ~         04h18m
2021年03/02(火)23h11m in天秤 ~  /03(水)05h39m
2021年03/05(金)01h12m in蠍  ~         07h44m
2021年03/06(土)18h47m in射手 ~  /07(日)11h22m
2021年03/09(火)09h55m in山羊 ~         16h42m
2021年03/11(木)12h35m in水瓶 ~         23h45m
2021年03/14(日)01h40m in魚  ~         08h45m
2021年03/16(火)12h42m in牡羊 ~         19h57m
2021年03/19(金)05h41m in牡牛 ~         08h48m
2021年03/21(日)21h07m in双子 ~         21h18m
2021年03/24(水)00h26m in蟹  ~         06h57m
2021年03/25(木)22h29m in獅子 ~  /26(金)12h27m
2021年03/28(日)08h49m in乙女 ~         14h24m
2021年03/30(火)09h09m in天秤 ~         14h35m
2021年04/01(木)09h31m in蠍  ~         15h00m
2021年04/03(土)14h28m in射手 ~         17h14m
2021年04/05(月)16h08m in山羊 ~         22h05m

ではお気をつけあそばせ。

2021
02.24

13日の地震で不通になっていた東北新幹線が、本日から再開するとのことでありました。

本日は、父方の祖母の命日なので、
「ぜひモリオカに行かなければ…」
なのであります。
毎年欠かさずに、命日に詣でていますと、こういう時に強迫観念に縛られるものであります。

臨時便だとか、一部徐行運転のために遅滞するということ。

「そーだ!」
10年前の東日本大地震の記憶が蘇ったのであります。
「あのときは、新潟を経由してモリオカにむかったんだっけ」
新潟から羽越線で秋田まで。そこからモリオカへという日本海周りのルートでございます。

が、10時間を要するのであります。

で、チケットを求めようとしましたら、
「秋田は吹雪でして、秋田新幹線のダイヤが…」
と係りのお女性は渋るのであります。

素直に東北新幹線を使ったら、どーなのよ。
みたいなムード。

目が語っているのであります。

あんたみたいに遊びで列車を使う人がいるから困るんだよなー。緊急事態宣言をどーとらえてますか。
不要不急なんですよ、社会は。
きっと、あんたみたいな人は五輪が嫌いでしょう。そういうタイプですよ。すこしは真面目に今後の日本を考えてくださいよ。
だいたい、なによ、そのファッションは。ああ、嫌いです。あなたみたいなテキトーな感じの男は!
ぜったいに好きになりませんから!

アドバイスに従ってというか、気おされて、
「では太平洋廻りで」

那須塩原を抜けたあたりから、外は吹雪に変わりました。

羽越線廻りでと思ってバックにしのばせていた分厚いミステリも読まずじまい。

昨日までの東京の春の暑さに慣れていた私メは、車窓にしがみついて景色にみとれるのでありました。
「やはり、日本海ルートにすべきだった」

駅員になんと目で諭されても、自分の生き方を貫くべきであった…なのでありました。

2021
02.23

春眠の季節でございます。
とくに二度寝の夢は、まことに不可思議な濃縮した内容。
下手をすると目覚めてから、その日一日中、夢を反芻することさえございます。

私メは、10代の頃から、ときたま、いや数年に一度、夢でしか逢えないお女性がおりますです。
そのお女性に逢うと、膝から力がぬけ、愛欲の炎に焼かれるのであります。
「やっと逢えたね」
の声すらも甘く首筋をなぶる感覚。
あるときは隣に人がいるというのに、丸裸になってソファーの片隅で抱き合うのでございます。あるときはモリオカ公会堂の別室で。放射能に包まれながらという時も。火口の淵でとか。
齢をとらないお女性でございます。

が、あるとき、自由にお女性と逢う方法を見出しましたです。
自由というのは言い過ぎで、逢うと魂が痺れるほどですから、スルリとどこかに消えたりいてします。

でも、ある程度、夢を自在に操ることは可能であります。

夢の中で、
「これは夢だ!」
と気づくことがあるはずであります。
たとえば、高いところから落下する夢とか。落下しながら、「夢に違いないぞ」と思うことが、きっとあるはずであります。

そのとき、
「夢ならば、飛べるはずだ」
両手を広げるのであります。
すると、ピーターパンとウェンディ―のように、ふわりと体が浮くのであります。

飛んだ経験もないのに、近所を屋根より少し高い空を飛んでいるのでございます。どこからくる記憶なのでしょーか。

これを応用すれば、
「夢なのだから、何でも可能になるのではないか」
そこでお女性を探しに出かけるのでございます。

空を飛びながら、彼女の出身校(夢の住人なので確かではありませぬが)の三階の窓の外から教室をのぞくと、
「出たな」
ニヤニヤと目配せし、「いま行くから」と鉛筆で上をさし「屋上で待ってて」の合図。

あるいは渋谷の改札口に現れたり。ヒラリと着地する奇妙さ。

ところが、そこで私メは魂を抜かれ、夢を操縦するハンドルを忘れるのであります。

改札口の彼女のすぐ後ろに、実際に存在する別のお女性が運悪く居合わすなど、その時点で夢の渦に巻かれるのことになるのでございますが。

しかし、あるときは銀行の金庫に透明人間として侵入することも難しくはございません。
宝くじを射止めることもございます。

ただやはり、大金を前にすると、意識が夢に支配され、札束がみるみる溶けだしたりはいたしますが。

欲に関すると、夢でも、夢のように儚い結末になってしまうよーでございます。

今夜は、飛ぶ夢を見たいと思いますです。