2021
06.06
06.06
帰りがけに雨が降りました。
ビニール傘をひらいたら、たちまち雨粒で視界が街灯で乱反射しました。
「どーしているのかな?」
脈絡もなく、あるお女性を思い出したのは、こんな雨の夜は、そのまま青山にあるバーに向かう習性の名残りだったのかもしれません。
が、いまはバーも閉まっていることでありましょう。
そのお女性は、太めのお方で、指が根元まで埋まってしまうほど柔らかな二の腕の持ち主でございました。
ふざけた会話ばかりで、すこしもエロっぽくないのでありました。
「わたし男に興味ないから」
とかいって、すると瞬間的に濃厚な雨のような体臭を漂わせるのでございました。
彼女と関係したのは、マスターがすすめたカクテルに、なにかが仕込んであったのではないかと、いまでも睨んでおります。
駅までの裏道を歩いておりましたら、腕をからめてきたのであります。
ジョークの関係から、欲情の関係に切り替わるのは、奇妙な感じでありました。
そして、果て、ふたりで、犬のような荒い息をしながら、クックックッと笑い声をあげ、ふたたびジョークの関係に戻るのでございました。
「オノさん、女でしょ、オンナ、オンナ」
多くの男がどーいうHをするのか、男である私メには不明でありますが、彼女の言うことには、
「ぜったいに女だわ!」
らしいのであります。
そして、また雨の匂いの体臭を発散させるのでございました。
彼女の生年月日時は記録に残されております。
四柱推命卒論科のテキストにも挙げ、
「レスビアンの傾向のある命式」
とは題しておりませんけれど、講義でなんとなく触れておるのであります。
こんな雨の夜は、彼女の蛇の舌のようにしなる愛撫が懐かしくなるのでございます。