2021
09.26

ふたつの老いた紫陽花が散り残っておりました。

その、ひとつを手折り、部屋に飾りましたところ、
「残酷な人ね」
恨みの声を耳にしたよーでございました。

老いても恋は恋。

その昔、銀座ジプシーが、死ぬ三年前に、牛シャブ屋の木曽路で、なぁ、ムッシュー、
「真っ赤なフルオープンのスポーツカーを最後に乗ってクタばりたいよ」
ジプシーは肉食。野菜は一切、口にしない男でありました。木曽路の肉がお好みでございました。
「髪の長い女を隣にのせてな」

老い方はそれぞれでございます。
まだ30歳そこそこだというのに、すでに晩年ではないかと思えるくらいに身も心も老いてしまったお方も多いのであります。
まず目に力がなくなり、それから部分的にドットで白髪が発生し、歯が汚れるという順序でございましょうか。
腎虚で、つまりおスケベをし過ぎると老いるという話を書物で読んだことございます。
男は、接して漏らすのは30代では三日に一度。四十代では月に一度。六十代に至っては接してはならないとか。
けれど、これはどーやら机上での理論かもしれません。

70代のお女性でも、恋をしているお方は美貌を宿しております。
白目が桃色であり、ちらっと流す視線に桃花殺がうるむのであります。

恋もおスケベもハートが重要でして、ハートが絡まないと勃起するモノも機能しないし、お女性からも姿態から音楽が失われるのであります。

そのハートは乳首と吐息にあると断言できますです。
乳首は肉体と心をつなぐ恋には欠かせない局部でありますし、吐息に沁み込んだ匂いは、求愛と拒絶とを明確に告げる神部でございます。
求愛の匂いを吸いこみ自分の肺臓に取り入れると、奇妙な温度を覚えますです。
限りない優しさのかたまりが膨らみ、心を切なくさせ、心から肉体的な変化へと渦巻いていくのでございましょう。

このようなことは、わざわざ説明しなくても経験なさっているお方はたくさんいることでしょう。

では。画像の老花は?

恋が、子孫維持を目的とする行為だとすれば、老花はすでに目的から外れております。
目的から外れた副作用こそが、恋の持つ不思議な優美さを、さらに盛り上げてくれるのかもしれません。

庭では、恋のパートナーを失った紫陽花が、秋風にゆれて過ぎ去った甘い思い出に苦しめられているのでございましょー。
「あれは現実にはなかったことなのでは」
と。