2021
12.19

「しやわせカード」に切手を貼り、投函したら、もう何もする気がなくなったのでありました。
まだ朝の9時だというのに。

本を読む気にも、音楽を聴く気持ちも退化したみたいになり、ベッドに横たわりながら、奇門遁甲の和綴じの秘伝書を、ボンヤリと眺めるのみ。

「そーだ、焼肉を食いに行くか」
しかし、先日の定食屋のよーに廃業していることを目のあたりにしたら、
「嫌だなぁ」
そんな気持ちをなだめつつ、クルマを走らせたのでした。

その店は、茅ヶ崎の家から15分。
辻堂に住んでいた時は、ごく近所でしたので定期的に食いに行っていましたです。
だから思い出…とまでは行きませんが、なつかしい店の一つなのであります。

ございました。
看板のまわりをさびしくピカピカと電気が点滅していることを、遠くから確認できたのでございます。

ドアを押すと、店員の白髪のオババと不愛想なオバさんがギロッと振り返るのでありました。
久しぶりでもなく、かといって他人を迎えるよそよそしさでもない無感情を、表情に刷いているのでありました。

「ああ、来てよかった」
しみじみと思い、あたたかな感情が胸にひろがったのであります。

待っているのでもなく、ご無沙汰である私メを詰問するでもなく、ただ、そこに存在しているありがたさとでも申しましょーか。

ビンボー学生の頃、我慢できぬほどの空腹に我慢できずに、横町にある小さな店で150円のコロッケ定食を貪り食って、熱いみそ汁をすすったとたん、不意に涙がこぼれたことがございます。
その店のオバさんと目が合い、同情がこもった顔をみたとき、
「もうこの店には来れない」
その時の、羞恥と悔しさのいりまじった感情が思い出されましたです。

不愛想な店員に感謝するのでございました。

明日はモリオカでございます。