2021
12.30

深夜に目覚め、それから寝るには惜しくなり、グラスにウィスキーを注いで、暗闇の音を聴くのは悪くありません。

しかし、なにかのキッカケで、
「ああ、女が欲しい…」
そんな衝動が脊髄の芯のあたりで渦巻くことがございます。

性欲を充たすことより、柔らかく温かな肉に甘えたくなるのであります。
若い頃は、わなわなと震える指で知り合いのお女性にダイヤルしたことでありましょう。
「い、いま行く」
くつろいでいた部屋が急にしがなく感じられるのであります。
いそいで着替え、夜の街に飛び出したものであります。

おそらく、お女性には、深夜にそういう電話を受けた記憶があるのではないでしょーか。
電話口でのエロ話には応じても、「えっ、来るって。マジで?」男の強引さに迷惑をおぼえたはずであります。

しかし、いや、やはり、いちどたりとも、その衝動に忠実に行動して、良い結果を得られたことは私メはございません。
目的ははたしても、気まずい結末が待ち受けているだけ。

それはそーでございましょう。
こちらの情熱と、相手のお女性の気持ちとには、雲泥の差があるからであります。
真心もなければ優しさもない。身勝手な性欲を満たしたいだけ。
「今夜のオノさんはヘン~」
そーして明け方に、妙にシラケて、「仕事がある」とかなんとか呟いて、いそいそと帰り支度をするわけですから。

また、奇門遁甲を知ってから、過去の手帳をひもとくと、すべてが間違いなく行ってはならぬ方位だったのであります。

若かりし頃の失敗…それは中年になってからもでありますが、そして老体となった今でも、その衝動はくすぶっておるのでありますが、
「おそらく方位は凶だろう」
酔いの頭で調べて見ましたら、「やっぱりなぁ」。
新宿界隈のネェさまのいる店の方位も✖なのでございました。
「池袋も、赤坂もだ」

グラスに氷を足したところで、我にかえりましたです。
キッチンに落ち着きがもどりました。
「まだまだ若けぇなぁ」
届けられたアサ芸のヌードグラビアを眺め、
「これを飲み干したら、また寝よう」
グラスにたっぷりとお酒を注ぐのでございました。