2022
02.27

モリオカに戻りましたら、陽光のなかを冷たい春風が吹いておりました。
「食い物が、もは、ね」
という老母と買い物に。
画像は、不来方城後であります。コズカタと発音しますです。『誰も来るな』という意味と解釈しております。
老母の実家は、この付近にございまして、近くに来ると、ボケがすこしは治るのであります。

「戦争始まったみてだね」
不意に世界情勢を語りだしましたので、驚きましたです。

「経済制裁をしたって無駄だえんね」
そして、城跡を指して、「だーれ、士農工商からいきなり商人の世の中になってまだ百年そこそこなんだおん」
老母の演説を聞きつつ、だまってハンドルを操っておりました。

日本人は、明治になって、いきなりお金の世の中になり、お金に支配されているというのでありました。
いままで武士の世の中だったのが、維新で、拝金主義に激変し、皆がお金、お金と騒ぐものだから、ロシアの資金を断てば、効果があると間違った期待をしている「えんちぇ」と結んだのであります。

「あんたにレーシングカーを買ってやらねかっね」
いきなり、遠い小学生の頃に話が飛ぶのでありました。レーシングカーが流行っておりました。手元のコントローラーでスピードを上げて、二台のミニチュアのクルマを競い合うヤツであります。部屋いっぱいにサーキットのコースを組み立てて。
ダメ、と拒絶されました。
お小遣いを二年分くれなくてもイイから買って欲しいと泣きました。
ダメ、ダメ。
「もは、いらねよ、いまさら」
運転しながら、ボケたんだべか本格的に…と不安になりましたが、そーではありませんでしたです。
「そしたら、あんたは自分で作ったえんちぇ」
たしかに、そーいわれると、ベニヤ板で作ったような記憶があります。
「火事になるところだったえんちぇ」
マブチモーターの乾電池で作ったレーシングカーを、より早く走らせようと家庭用のコンセントから電源を得たら、突然に爆発し車体はバラバラに飛び散り、座布団に飛び火して天井まで炎が上がったのでした。言われて思い出しました。

「それと同じさ」
経済制裁をしたところで、ロシアはそれを逆手に、もっと凄いもので脅かしにくる。
老母は「やるところまでヤレばいいのさ」と話を締めくくったのでございます。

今回のモリオカの目的は、老母の確定申告書の作成のためであります。
「自分でヤレば」
なんだか、とても疲れたのでありました。