2022
09.10

猛烈な熱暑がさり、しかし、うんざりする生暖かさがのこる9月に似合う飲み物はと問われたら、迷なく言うでありましょー。
「モヒートだ」と。

ラム酒に濡れたミントの香りは、みじめに終わった夏の恋でも、ステキな思い出とした心のフォルダに納められそーな気がするからであります。

ライムを潰し、汁をグラスにしずめ、お湯に溶かし、冷ましたグラニュー糖を注ぎ、ミントの葉をスプーンの背中で軽くたたき、そして炭酸水を加えるのであります。ラムはキャップで2杯ほど。
最後にクラッシュした氷を混ぜ合わせると、グラスは緑の森にかわります。

夏の終わりを告げる風を感じられるのでございます。
もう、白いTシャツもデッキシューズも淋し気に、風に揺れる低木の葉陰をうけて、時に眩しく、時に灰色に染め分けるのでございます。

好きとか囁くのも空虚に感じられるのであります。
ほのかな酔いが脳天からおりてきて、そこには倦怠という名の安心感が生まれます。

目を上げると、ついさきほどまで向かいにいたお女性はおらず、もしかすると自分は夏の間、ずっと、そこにいたのではないかという錯覚に陥ったりもいたします。

ああ、そんなこともあったなぁと、事務所でこしらえたモヒートを傾け、
「いよいよ秋だなぁ」
意味もなく、おいおいと泣きながら、お女性の胸を吸い続けていたい夜。空には、白い月。
東の空に満月がのぼっているのでございました。

古い恋を、思い出すにはもってこいのお酒。
甘いところだけを思い出させるのでございます。