2023
03.24

実家の入り口に、画像の手袋が落ちておりました。
ふつうなら「誰かが落としたのであろー」と通り過ぎるところであります。

が、私メは奇門遁甲の術師でございます。
「むっ、こ、これは…」
ただことではない、ドロボーの前触れだと直感したのでございます。

もう20年度前、神保町の雑居ビルのペントハウスに事務所があったときのことでございます。ビルの入り口に、やはり手袋が落ちておりました。
手袋はドロボーさんが泥棒しやすくする呪いなのであります。
不動産屋に注意しましたが、アハハと嗤わただけ。
しかし、三日ほどのちに、私の事務所を除き、一階から六階のすべての部屋がトロボーさんに荒らされたのでございました。
警察どもに、やたらと疑われたのは申すまでもございませんです。

じつは手袋は本当の呪いのセレモニーなのであります。
じっさいは、大きな屋敷を狙う時、事前に、塀の外側の東西南北にドロボーさんの大便を置き、そのうえに手袋を置くことが本当の術法なのであります。こうすることで、番犬を手なずけることが出来るのであります。

こうした知識と実体験がございましたから、
「由々しき事である」
と直感した次第でありました。

防犯は、まずは完璧に近いのでありますが、油断はできません。
「あんや、だれかが落とした手袋だえんちぇ」
世間知らずの老母に言っても無駄でございます。

「ではーー」
私メは手袋を拾い上げ、近所の亡叔父の家の門前に移したのでございました。
移動して果たしてドロボーさんが叔父の家に押し入るのか。
そこが知りたいのであります。
この父の弟は、いずれ家系図から抹消する予定でおります。
私メに逆らい、私メの土地家屋を手に入れよーと画策した叔父だったからであります。いまではその老妻と息子夫婦親子が住んでいる模様ですが、根絶やしにしなくてはならぬと考えておりましたから、実験にはちょうど良いのであります。
血族だとて容赦はいたしませんです。
「ドロボーさん、この家なら盗むだけでなく燃やしてもかまいませぬぞ」

さーてどーなるやら。
ワクワクものでございますです。