04.19
宮古市にあった喫茶店であります。
わざわざ山田線で2時間ほどかけて向かったのであります。ジーンズのお尻のポケットにはお年玉でもらったお金をすべて突っ込んでおりました。
ヒロインという店名に刺激されたまであります。
当時、平凡パンチという青年誌がございまして、記事に、ヘロインにちなんだ店名があり、そこで人差し指と中指でタバコをつまむ格好で二度三度振ると、それが合図でヘロインを売ってくれる、みたいな内容でした。
つまり麻薬のヘロインを手に入れるノウハウなのであります。
また深夜ラジオでフォーク歌手が麻薬をしない歌手はアーティストではないみたいなことを語っておりました。
麻薬のヘロインを手にすること、それが青春の条件なのであります。
罪悪感などゼロ。
15歳の頭の中では、地方紙で紹介されたヒロインとヘロインと容易に結びついたのであります。
店内は純喫茶風でありました。どこか重々しい作りだったように記憶しています。
さっそく、店員にVサインを横にした中指と人差し指で合図を送りました。
「?」
反応がございません。
五回は合図したのでしたが、まるで無反応。
ウェイトレスだから駄目なのだと思い直し、トイレに立つ振りをして、カウンターのマスターらしき黒いチョッキのキザ男に、中指と人差し指を合図しました。
マスターらしき男は、不思議そうに私メをみて、しばらくして納得したのか、一、二の三というタイミングで拳骨を差し出しました。
私メの合図をジャンケンだと勘違いしたみたいでありました。
グーでマスターは勝ちというように拳を上げガッツポーズ。
まったくバカげた10代の私メであります。
いまだって同じかもしれませんが。
魚のいない池に釣り糸をたらし、いつか幸運という名の大魚が釣れるはずだという妄想を死ぬまで続けるのでありましょーか。