2024
11.08

モリオカに着くや否や、メールが飛び込んでまいりました。

遠い知り合いからのメールです。
しかし、文面をみて、
「死んだか…」
知り合いの息子が、父親のアドレスにある人たちに片っ端から訃報のメールを送っていたのでした。

私メよりも3歳若い、とはいっても60代。早いとは言えぬ死であります。

中古で購入した最初のクルマから保険屋として付き合っていた相手であります。
妙にフレンドリーで、ランチに誘われて寿司などをつまんだものであります。
可愛いことに、イクラを最後までとっておいて大事そうに食う男でありました。

「保険屋かぁ」と軽く見ていたのですが、ある時、「会社を作るんです」と言われた際の、私メの顔は醜く歪んだのであります。
いまでもハッキリと覚えております。
どのように返事をして良いのか言葉につまり、ただならぬ沈黙がございました。

当時、私メは貧乏のどん底でございまして、45万円の中古のクルマも祖母から借りたお金で購入したものであります。
寿司をおごられるのも営業の一環だと軽くみておりました。
占いは齧った程度の知識でございました。

その後、彼の会社は大発展。
不動産業を中心に従業員も60人を超えておるのであります。

たまに電話があり、独特のぺたっとした声で、「おのさんのブログ見てますよ」などと食事に誘われるのでありました。
最後にあったのは4年前ぐらいか。
顔色が悪かったので、頑張り過ぎだよと忠告し、その返事の言葉にのった吐息が「癌の予兆」でありました。
死期の赤い矢が二本ほど暗示っぽく見てとれました。

メールの、文面の名前は、息子のものでした。
「会社名は、今年生まれた息子の名前にしたんですよ」
その声はいまでも耳に残っております。

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