2025
10.03
10.03
「お兄ちゃんに見せたいトンネルがある」
妹に誘われて、雨天の中、遠野へと向かったのは先週でした。
先週と記したのには何の意味もございません。
「この先に白いトンネルがある」
しかし、この先のトンネルは白くもなく、普通のトンネルでありました。
古いトンネルでして、ヘッドライトの光が暗さに座れ視界は不良ですが、そのくらいのトンネルならいくらでもありますです。
「おっかなぐねぇか?」
「ひとつも」と答える私メに、妹は「鈍くなったんでねぇのっか」と皮肉を返してきました。
恐いのは、帰宅してからだったのです。
私メの家に入るには、3つの鍵が必要であります。
まず、門の鍵。つぎにシャッターの鍵。そして玄関の鍵。
それぞれ色が違います。
スペアキイは妹に預けていまして、私メが関東に滞在しているとき、妹が自由に家の中に入れるためであります。
その妹が、「開かない」と電動のキイのボタンを何度も押しているのであります。
それは白い鍵。門を開けるには黒い鍵であります。
私が指摘しましても、「いや白い鍵だ」と譲りません。
なので私メが黒い鍵のボタンを押すと、門はゆるゆると上がりました。
茫然自失の妹。
私メも一種の不気味さを憶えていました。
「ボケたべか?」と。
トンネルのせいなんだ、と慰めはいたしました。
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