2011
10.31

むかしからの知り合いのMrギムレット氏に、
「とにかくディープな店だから覚悟して」
といざなわれたのが、江戸川橋付近の、この店でありました

いぜんは寿司屋だったなごりが、無常観をさそうのであります。

店内は卓球台ほどの大きさのテーブルがひとつあるきり。

すでに人生をあきらめた老人たちが臭い焼酎をあおっては、世の中に対する悪態をついているのでありました。

新参者らしく、ここは静かに飲むことにして、卓球台の一番隅に鎮座しました。

先生と呼ばれる、40代後半の色白の男が、われわれをチラチラと意識しているのであります。

そいの煮つけを二つ、いかげそわたも二つ。
それから生ガキとイワシの刺身、サラダを注文いたしまして、焼酎をひと瓶。

やや酔ってきたそのとき、信じられぬ美女が入ってきたのでありました。

いっしゅん店内は静まりかえり、老人たちは激しくむせびかえり、色白の先生はメガネのレンズを曇らせ、チンピラ達は焼き鳥の汁をこぼすのでありました。

私メとMrギムレットは、なにしろ新参者でありますから、その美女と男たちの反応に目を奪われるばかり。

と、美女はぷかぁーと煙草をやりはじめました。
チンピラも老人たちも、そして私メもつられて煙草をぷかぁー。

聞くところによると、この店に美女が来るのは年に一度くらいなものらしく、ちょうどその日に我々が来たことは、なにか意味のあることのようでございました。

美女のおかげで、我々はすっかり酩酊するまで、その店に根がはえていたのであります。

値段、ふたりで4200円。

「いまごろ、連中はおれたちの悪口を言ってるよな」
と、私がもつれながらいえば、
Mrギムレットも、
「そいの煮つけなんか喰いやがって、なんてね」
とこたえるのでありました。

女一人のロマンもなかなかでありした。

  1. 全部食べても 4千550円?!安っ\(^^@)/

    その信じられぬ美女は お一人さまで?
    私は 国内一人旅&温泉と居酒屋さんは お一人デビュー
    はまだです・・・あ、いい女じゃなきゃですわね~|゚Д゚))) ムリ・爆!

    先生、福本銭ですが 紐で結んで更に自分の好きな石で 
    アンティーク風かつ アジアンヨーロッパな ペンダントに
    仕立ててみようと思いついたのですが わざといぶし?たり 
    だんだん色が変わってきたのを付けてても 大丈夫ですか?

    そのまま付けると ちょっとピカリすぎなの~~。。

    ●十傳より→神様が宿っているというモノではないので、お好きなように加工してください。その効果があれば、あとで教えてくださいまし。
    美女は一人でありました。幽霊かもしれないと思いはじめてきたところであります。

  2. 幼なじみで、酔っぱらっては自分の恋バナを純文学風に語る男がいます。
    いつも行くお店は決まっているのですが、
    たまには、こんなディープなお店もいいですねぇ。

    「俺ってきっと、何か足りねーんだろうなぁ」という、いつものセリフに、
    「Hがめっさ下手とか?」
    「実は絶望的に小さいとか短いとか早いとか?」
    ……などと、ディープな返しもできそうな気がします。

    ついでに、
    「おやじさーん!生ガキとイワシのお刺身ください。やっぱり何でもナマがいいよね~」
    …と、オヤジギャグどころか、ウケるよりスベる可能性の方がはるかに高いおっさんギャグを口走ってみたい衝動に駆られます。
    「お前は変わった」と、どん引きされるような、あたしのディープな一面が、
    こんなお店では炸裂してしまいそう。で、ありまーす。

    ●十傳より→まったくもって、おっしゃる通りの店でありました。これで江戸川が洪水になっても、スネまで川水に浸しながら飲んでいることでありましょう。

  3. 娘が幼かった頃、一時、釣りをするため防波堤に通いました。
    1000円くらいの釣りキットを持って。
    防波堤では教えたがりの親切なお爺様が沢山いらっしゃいました。
    釣り糸が絡まるとほどいてくさったり、
    稀に、鬼カサゴ?が釣れたりしたら
    お爺ちゃんたちは、「危ない、危ない」と大騒ぎして、釣り針から外して放り投げてくれました。
    あたしたち親子に釣られるおマヌケな魚は、たいてい赤ちゃんハゼ。
    グリルでさっと焼くだけで、骨までおいしくいただけるほどの小物。
    それでも1匹は1匹。えっへん、と誇らしく思ったものです。
    何にもヒットしなかったある日、お爺さんは自分の釣った魚をプレゼントしてくださいました。
    見てくれがピラニアっぽい、ギョロっとドスの利いた目をした魚。
    「クロソイっていうんだよ」とお爺さんは言いました。
    帰宅して、しばしの間、魚とにらめっこ。
    お爺さんの言った「美味いよ」を頭の中でリピートさせながら、
    〈ま、不味いかも…〉との思いを打ち消し、塩焼きにとりかかりました。
    見てくれで判断してはいけなかったですね。
    骨離れのよい、脂ののりにのったじつに美味しい白身魚でした。
    残念ながら、皮は焦がしてしまいましたのでいただけなかったのですが、
    分厚くてコラーゲンが多そうで美味しそうでした。
    そいの煮つけ、想像どおり、コラーゲンぷるぷるなのでしょうか?
    そいはなかなかスーパーでは見かけません。
    あの日、皮を食さなかった心残りが…
    先生、是非、教えて下さいませ。

    ●十傳より→ソイはだいたい今頃、青森で釣れる北の魚だと思いますです。夜釣りで釣ったことがありますです。白身の魚であります。身は淡白。刺身が美味いといわれましたが、私メは藻屑体質なので、シャブシャブで食いました。ほのかな甘みがあるのであります。あの店で食ったのは20センチほどでしたが、普通は40センチ以上の大魚でありますです。ソイのしゃぶしゃぶを思い出したら郷愁に誘われるのでございます。

  4. クロソイは、
    アンコウみたいな大きさに成長したものでなければ、20~30センチ級のでしたら、
    東京~伊豆でもテトラポット周辺に生息しているようですよ。
    白身魚のわりには、深海魚のようにあまり動いてなさそうな魚のようなコッテリ感がありました。
    ところで、20センチのそいくんは、ぷるぷる感は無しだったのでしょうか?

    ●十傳より→ネチョネチョ感でありましたね。20センチというより280円でしたから。