2011
03.26

松屋の豚丼であります。
タマゴとお新香とみそ汁のついたセットで410円であります。

テーブルに並んでいる醤油以外のドレッシングをすべてぶっかけるのであります。周囲のお客さんはシーンと黙りつつ私の手元に注目。

そして頭を左にやや傾がせて丼にかぶりつくのでありました。クロールの要領で胃にかっこむのであります。
タマゴも丼に。そのさいに大切なのは肉のヒトキレでタマゴの小丼の内側をぬぐって黄身を無駄にしないようにすることであります。

開運料理のワケがありませぬ。
が、かような飯を異常なまでに欲しているときがあるのであります。
一年ぶりくらいでしょうか、松屋の豚丼は。
ウマイのであります。

食い終ればもう用はありませぬ。
ムスッとして立ち上がり引き戸を引いてでるのであります。背後で「ありがとうございました」と声がかかりますが、無視するのがイキなのであります。

震災で家族も家も、もろともに失い、一人生き延びた五十才過ぎの男が、昼飯を食い、日雇いの道路工事にふたたび戻っていく様を想像いたしました。貸与された労働服をきているはずであります。煙草も吸うでありましょう。安焼酎の匂いが染みついていることでありましょう。灰色に濁った双眸をしていなければなりません。

頑張ろうとか希望を失うな、なにがなんでも復興させるのだ、という理想とはとおくに、今後の現実はあるのでありましょう。力強い励ましにうんうんと頷きながら、けれども一人になれば息をするのも重いのでありましょう。

日雇いで稼いだ金は、やはり震災ですべてを失った盛りを過ぎた女…いまでは売春をしている女に落としていくのでありましょう。
「あんだ、気仙沼の人だっぺ? なんとなぐ分がるおん」
「……」
「遺体があがったんだばまだ良いほうだよ。おらほのはぁ、波にもっていがれだままだでば」

松屋の豚丼が、あたかも未来を予見する水晶のように、そういう起こり得る日本のこれから…けっして美しくはありませんが、冷酷ではない温度のあるこれから十年のヒトコマを想起させたのであります。

私の後ろを何本ものペットボトルを抱えた人々が追い抜いていくのでありました。
つぎは放射能汚染の水道水であります。

人間五十年…であります。

このゲームからイチ抜けましてございます。

  1. 災害後、兵庫県の「まつ家」!?「松屋」さんで初めて朝定食を頂きました。山盛りご飯と味噌汁がこんなに美味しいなんて!と感動いたしました。
    関西も豚丼メニューはあるのですが、皆さん牛丼を召し上がられていました。
    私も関東では豚丼を食べるのが引け目を感じるので九州で頂きたいと思います。
    男性が痩せている理由は、山盛りご飯が好きなことだと思います。
    納豆がない場合は、放射能を野菜から拭えるぬか漬けが良いですよ。
    旅行に行く前にぬか床を作っていたので、母に助かったと言われました。
    岩手や福島や千葉にヤクルト工場がありますが、昔のように乳酸菌を家庭で育む時代かもですね。
    愛の乳酸菌!

    ●十傳より→むかし「愛のスコール」という、乳酸菌入れの飲み物がございました。1972年頃でしたか。店員に「愛のスコールください」と小声で頼むと、店員は「愛のスコールの方!」と大声で呼ぶのであります。

  2. 「愛のスコール」宮崎県の日高農業で作られているグリーンのパッケージでありますね。
    存じ上げておりましたが、ヤクルト信仰で飲んだことがありませんでした。見つけたら飲んでみますね。
    地震の前の日に京都の徳川綱吉公の母、桂昌院ゆかりの今宮神社で可愛い京野菜のイラスト刺繍入りのお守りを授かり、一晩お守りを握って寝ましたが、桂昌院の願いは「西陣へ再興を!」だったのですね。
    これからは、「東北陣へ再興を!」ですね。

    ●十傳より→東北再興より、へぇ、まだ「愛のスコール」はあったのでありますか。

  3. 松屋さんの豚さんドレッシング、まだ試していませんです。いつかきっと…
    あたしもイチ抜け派です。将来もう子を生まないからです。気の毒なのは、これから授乳の予定のある妊産婦さんや授乳中の母親、そして将来子作りをするであろう子供たちです。チェルノブイリでの水頭症や双生児の記憶は古いものではないです。そして広島・長崎の悲劇も…。
    福島原発は、私と同い年。原爆を落とされた国がたった20年でそれを利用する事を選択したなんて…。科学の進歩は止められないというのはわかりますが、私達の生活にも言えるのですが謙虚さが必要ですね。まぁ、アーミッシュのようなストイックな生活までとは言いませんが…。科学つながりで…人工授精も人ごととはいえ、すごく考え込んでしまいますです。
    原発への風当たりが強い今を選んで「太陽光発電促進付加金のご負担のお知らせ」を贅沢カラーで配布する某企業に言いたいです。「役員報酬90%カット、正規社員の給料半減して賄え!」であります。神奈川県知事選挙ですが、そちら業界のお金の匂いがプンプンと漂ってくるのは私の錯覚でしょうか?
    消費電力量を下げる目的で料金を引き上げればいいとテレビで発言した人がいたけれど、貧しい高齢者に死ねと言っているのと同義語だという事にも気付かない無神経ぶりに驚きました。そんな人を出演者に選んだテレビ局もどうかと思いますです。
    全身アイスクリームでできている娘は「今年はアイスクリーム食べられないんだって」と落ち込んでいます。何を呑気な事をぬかしとんじゃ!…とは思いますが彼女にしてみれば放射能と同様に、いや、そのことがあるからこそ切実な問題なのであります。

     ●十傳より→都合が悪いことに対しては、デマとか風評ということにしておりますね。結果的にデマや風評であったとしても、防災という意味もあるのであります。選挙投票こそ茶番であります。なぜそのことに気づかないのか。だから日本人は呑気だといわれるのであります。

  4. akikoさん、ありがとう。ヒロシマ・ナガサキを話題にしてくださって。私は被爆地が故郷です。

    被爆者のひとは原発を心配していますが、二世世代の私らは違います。

    福島のひとが原発心配するならわかるが、東京が放射能でガタガタいうなよ、が本心です。嫌なら疎開すれば良いのです。

    ただし、保安院が本当のことを言っているなら、が前提。なぜ温度を公表しないのでしょう。計器がこわれているのでしょうか。海水は海に排水されているのだとすると…

     ●十傳より→今回の事態は政治家も専門家も初めてのこと。つまり素人同然なのであります。素人が素人に説明しようにもいかんともできないのであります。我々はカンによって行動する以外に道はないのであります。

  5. 懐中電灯のような人間は、このような時に強いですね。平穏なときは寝ているのに、異常事態になると目がパチクリをリと開き力を発揮する人です。
    生きていても仕方のない人間なんだ!と生きていましたが、どうしても見えない力によって生かされているようように感じますです。

    ●十傳より→異常事態にこそ実力を発揮するように生まれついている人間がいるものであります。人々が右往左往している時に、逆に水を得た魚のように生き生きする人が。太陽さんは救世主かもしれませんです。

  6. こんなのが、載ってました。考えさせられます。
    http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-402.html

    http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/709.html

      ●十傳より→原発にたいしてもっと大騒ぎになってもいいのであります。デモをして素人お遊戯集団、民社党の本部を取り囲み、政権から退いてもらうとか、とにかく日本人は呑気すぎるのであります。

  7. 十傳先生いつもありがとうございますです。ブログ記事拝見いたしそうらえば、松屋の豚丼食べたしそうろうでごさりまする。と、いうことで私も松屋は一年ぶりぐらいかもでございますです。醤油意外のドレッシングすべてをかけて食して参りましたでごさりまする。
    松屋豚丼十傳流の作法をお教え頂きありがとうございますです、コレはなかなかウマイのでありましたでございますです。

     ●十傳より→焼肉用のドレッシングに混じりしニンニクが後々まで臭いましたでありましょう。

  8. ↓「原発がどんなものか知ってほしい」平井憲夫さんが15年前に遺された原稿です。
    http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
    15年経って飛躍的な技術革新がなされたとは、あたしには到底考えられません。
    最高に美味しい福島の白鳳を思うと涙が止まりません。
    〈おいおい、自分の事かよ〉ですが…そうです、ごめんなさい、です。
    停電生活を覚悟の上、全国の原発停止を要求します。

    ●十傳より→原発はおおかた政治家が袖の下で決まったことなのでありましょう。停電生活も悪くありませんですよ。夜空の明るさが分かりますですし。