07.31
ナッツは八歳になる雑種の牝犬であります。
老犬となり、使っていない子宮が腐って膿をもっていたのでございます。
犬は突如として病状を呈するモノでありますが。ナッツも例外ではなく、食事をいっさい摂らぬよーになり、ぐったりと動かなくなってしまったのでありました。
で、犬猫病院にまいりましたら、子宮摘出の手術をするか、それとも死ぬのを看取るのかどっちを選ぶの?と女医に迫られまして、「では手術を…」ということになり、しかし「ダメかもしれないわね」と言い渡され、そのために「ナッツの生死」を断易で占ったのでありました。
卦は地沢臨の三爻四爻変で大壯に之く。(胡煦納支)
ペットでありますから、用神は子孫。
いま子孫は初爻と上爻に酉の子孫がございます。
初爻は白虎。上爻はあの世を司り螣蛇。
ここは手術を決めたのでありますから初爻の酉の子孫といたします。白虎は血刃。手術では吉であります。同じ静爻の酉でありますから、まぁ、初爻でも上爻でも、どっちでもイイわけでありますけどね。いちおうは雰囲気を出さないと。
用神の酉は旺相しております。酉から見て日晨の子は「死」。12運で「死」は断易で見なくてもイイのですが、これも雰囲気としてであります。
元神の未も旺相していますから、これは大丈夫だということになります。
三爻に伏している卯の官鬼。これが子宮でありましょう。
次の旬は寅卯空亡で、卯、つまり子宮が失われることを物語っておりますです。
しかも月建が未でありますから、卯の官鬼は随官入墓と見てもイイでありましょう。子宮が失われることを、ここでも告げておりますです。
また子孫にとっての忌神は三爻の巳父母。空亡であります。動いて空亡に化してもいます。
忌神の働きが封じられていますから吉。
さて、大象は吉で、大丈夫だと言いたいのでありますが、ひとつ気がかりがございます。
四爻の丑が動いて、酉を動墓として墓場に引きずり込んでいるのでは…という点であります。
丑は月破でありますが、日晨の子と合して月破の傷を埋めております。
が、ここは動墓とは見ないのが正解でありましょう。
三爻の巳は空亡でありますが、巳ー酉ー丑の三合の「情」があると見てイイと思うのであります。
動墓とさせないために、易の神様は三爻を動かしたのであります。そして三爻を動かしたために結果的に六冲卦。なかなかのモノであります。
大壯の六冲卦。近病には吉なのであります。
ナッツを受け取る時、
女医は冷蔵庫からガラス容器に入った摘出した子宮を見せてくれました。
「ここが、ほら」
と、やや疲れたお色気をほんわかとにじませて私メの目を覗き込むのでありました。
「ここですか、わかりませんけど」
と指を伸ばしました。
そのとき女医の指先と触れたのであります。
「……」
「……!」
もういちどこの卦を見ますと、世爻の未は私メ。応爻の亥は女医。そして伏官の卯は子宮。
亥ー卯ー未の三合のこれまた情を告げていたのであります。子宮を仲立ちに、私メと女医が提示されていたのでありました。
「でも六冲卦ではなぁ」
六冲卦は恋が実らずという意味がございます。
炎暑の中をとぼとぼと帰宅したのでありました。
さて、現在、断易初等科でお勉強中の紳士淑女の皆様。
これくらいの判断はすでに出来るはずであります。
複雑な読み方は一つとしてしてはおりませぬ。すべてご伝授しておることばかり。
一期生、夜間コースの皆様も同様でありますです。
断易は困った事態に直面した時、鮮やかに事象を展開してくれる、じつに素晴らしい占術なのであります。
四柱推命、断易、そして奇門遁甲は、これからの時代に激しく役立つモノなのでございますですよ。
最後に一つ。
断易は「吉凶のみをみるべし」という説がございます。
しかし、これには承服しかねますです。
事象を見ずして吉凶が分かるものかと思うからであります。
師の鷲尾は、吉凶だけの断易を「いい加減断易」と嗤っておりました。
私メも師に同調いたしますです。