2019
02.20

雪の少なかったモリオカの冬も終わりを告げているのであります。

雨が森を呼び起こしているかのようでございました。

春になると、若者は活動力をしめし、老者は、またひとつ老いるのでございます。

雪は暈を減じ、初冬に降る清らかな雪ではございません。
泥にまみれてしまった残骸でしかございませんです。

春の国道を運転しながら春の憂鬱にかられるのでありました。

「さよなら」
と去っていった少女が振り返ると、縮緬皴の浮いた老女になってしまっているかのよーに。
くたびれた笑顔からはゴムまりの弾力が失せ、「あとすこしで桜が咲くね」と言われても、桜の花ではなく老木の黒い幹でもあるみたいに。

トリカブトが欲しくなってまいりました。

老母から、私メと同年齢の近所の人たちが、
「死んだよ」
と聞かされ、うらやましくもあるのでありました。

春は忘れられる季節なのであります。
希望に胸を膨らます人々がいれば、その膨らんだ分だけ凹む人たちもいるのでございます。
そして、希望がやがて空虚なしやわせであったことを知って、次の世代へと絶望の種子は開花していくのであります。
花は咲くことが目的ではなく、目的のための手段であり、目的を終えれば散るさだめであると、誰しもご承知なのに、それでも、今度こそはと開花を待つのでありましょうか。

手のひらに、確実に存在したと思っていた乳房が、お尻が、つややかなお腹が、火葬場の灰と化すわけでありまして、その恐ろしい速度は老いてみなければ分かりませぬ。

市内に戻り、川徳デパートの地下で買い物をしました。
エレベータに同乗した老嬢の顔にかつての美貌の灰がまぶされていました。
「何階ですか?」
おもわず聞いてしまいましたです。

 

  1. 盛岡でさえ雪が少なかったのですから
    温暖な気候のこちらで雪を見たのがたった1日というのもウナズケます
    それも殆んど積もりませんでした
    良いんだか悪いんだか
    なんか物足りない感じがします

    ●十傳より→秋も冬もない一年だったよーな。

  2. 薪スト-ブですか、いいですね
    透明感のある柔らかい炎を見ていると心が落ち着きます
    老いて行く速度の恐ろしさ
    あの雄々しかった男性が今では老人となり
    歩く事もままならないほど弱り果てた姿を目にしたとき
    自分の中の記憶との違いに、現実の残酷さを思い知らされます
    いつの間に歳をとってしまっているのでしょう
    「気が付いたら年寄りになっていた」
    ご老人の口から何度かこの言葉を聴きました
    気が付いたら ……… 本当にそうですね
    ある日、暫く履いていないズボンを履こうとしたらボタンが閉まらない
    知らないうちに、気が付かないうちに、下腹部に脂肪が黙って住み着いていました

      ●十傳より→気づいたときは手遅れ…ということにならぬよーにしなければ。

  3. もうすぐ惨月です。急に暖かくなったり、寒くなったりするんでしょう。そして嫌なのがゴキブリ。近所の主婦たちも啓蟄に虫がざわつくのは心得てるのか、毎年啓蟄あたりはゴキブリ対策のものが品切れになります。気晴らしに3/2PM3h0北東の丙丁でもやるかな。

      ●十傳より→ゴキブリは何かの比喩になりそーな年でありますですね。