09.08
帰宅して汗を拭いていましたら、宅急便が届いたのであります、
リンゴでありました。
郷里の高校の担任からでありました。
一個つかんで、ズボンでこすって、かじりました。
メリメリっと林檎の木の幹がわれるような音をたてました。
甘酸っぱい香り、それは奥羽山脈から吹きおろす風の匂いでありました。
「さあ、みんなして歌うんだぞ！」
と、40年前の担任の声が聞こえるようでありました。
「マンチェスター、エト、リバプール～♪」
と帰りのＨＲの最後に、担任の指揮のもと、クラスのものどもは、この歌をうたうのでありました。
「もう林檎の季節なのであろうか」
関東はまだ残暑。いや東北も関東以上の気温だと、天気予報は告げております。
お礼の電話をしたら、
「おうおう、届いたっかぁ」
83才のかすれた声の底に、当時の響きが残っておるのでありました。
電話を切りましたら、九月の日差しが部屋に差し込んでいるばかりなのであります。
同時に、女子高の不良少女の顔がなびくのでございます。
ふたりで生活しようとして失敗し、東京から強制送還された夜の東北本線の窓ガラスで目を合わせた、彼女のなにか言いたい顔が、不意に浮かぶのでありました。
彼女と、最後にあったのは郊外のバス停でありました。
「あんたね…わたしがいう言葉でないけど、甘いとおもう」
もう、顔を合わせることなく、
「じゃあね、また…」
と、それからの記憶はありませんです。
「オノくん、おまげしておいだからな」
と三年生の二学期のおわりころに、担任に呼び出され、「これは秘密にしてもらわねばな」と念をおされ、見たら、成績も出席日数も下駄足をはいていたのであります。
いまでは文書偽造でありますです。
が、不良少女と別れてから、かなりすさんた生活をしておりましたから、その偽造の内申書がなければ、別の生き方をしていたことでありましょう。
そして、「マンチェスター＆リバプール」であります。
ものどもの声の限りのだみ声が聞こえるのであります。
喉が渇いていたわけでもないのに、
まるで地獄の餓鬼のように、またたくまに三個のリンゴを平らげたのでございます。
カラダの中で風がたち、胃袋のなかからリンゴどもは私メの名を連呼しているようでありました。
「かえってこい、もういいんだから、はやぐ、けってこ」と。
すでに仲間たちのたいはんは荷物をまとめて東京をさっております。
飲み友達もほとんどおりません。
が、私メには、きっとまだ、やらなければならないことがあるのだろう。
何者かが命じているようなきがするのでございます。
もうすこしだけ待ってろ、それがすんだら還るから、と腹をさするのでございました。
いろんな意味で、よき時代だったのでしょうね。
やっぱり…
先生は、いつかはモリオカへ…。
かえる所がある先生が羨ましいような気がします。
私は結局どこにも行かず、ずっと生まれ育った街で、
思い出のしみついた海や道や建物と、いつも一緒に過ごしています。
帰省した友達に、「変わらないね。ホッとする。」って、まるで故郷の風景のひとつみたいな言い方をされて…。
でも、たまに、将来なにになろうかな…なんて、ふと思ってしまうこともあります。
●十傳より→将来のある人は大変でありますですね。私メは、あとは死体になるだけでありますから。
「将来」っていうのは、
帰省した友達と、あの頃教室で話していたような、「大人になったら…」って意味です。
私もいい大人ですから、そんな将来はありません。
故郷から遠く離れた土地へ飛び出すイコール大人って気がして、
自分がまだ何にもしてないような気持ちになるんです。
●十傳より→地元残留組に、「井の中のカワズ、空の青さを知る」と言った教員がおりましたが、空の青さをあらためて知るには、濁った空の色を知らねばなりませんしね。
先生、帰っちゃイヤです………
●十傳より→「郷里」を「あの世」に読み替えても面白いのであります。黒人霊歌「オールドブラックジョー」みたいになるのでございますです。
先週職場を無事に退職し、安堵したものの
大事なメールが迷惑メールに振り分けられて大慌てし、
大汗をかきながらご返事し、気持ちを落ち着かせるために先生の
ブログをのぞきに来ました咲友です、こんにちわ。ｍ（－－；）ｍ
先生、いつか盛岡に帰られるのですか…。
やっぱりさみしいです。
まだ先のことなのかなとは思いますが。
先日のブログでは講座のほうも開始されるようなことが
書かれていましたので、断易に立候補させていただきます！ｗ
占い講座を受けたことがない人間なのですが…。
●十傳より→毎月モリオカには戻ってはいるのでありますが、本当に帰りたい場所は、どーもソコではないような気がいたしますです。占い講座は、ただいま整備中でありますです。
故郷…私は40歳を目の前にして離れました。
短大もお金が無くて地元の短大へ進学し…当時お付き合いしていた元夫も地元のお方…
結婚をして…まさかこんなはずじゃ…と離婚を決意し、ありとあらゆる経験をとことんやって…どん底を味わい…
それでも諦め切れず新しい自分探しをする為に全てをリセットして上京しました。
でも…やっぱり最終的に眠る場所は、故郷だよ…と自分に言い聞かせて…。
先生の今のお気持ち…何となくわかるような気が致します。
●十傳より→郷里の山も川も木も草もやさしそうな気がいたします。故郷とは土地にあらず、心を許せる人たちだ、と、どこかで読みましたが、私メにとっては、やはり山河なのでありますです。
ここ東京でも、私の心をズタズタに引き裂いてくれるお方との出会いがあれば、諦めもつくでしょうが…
私にとって…この地で知り合ったお方(先生含め)の方が、温かく感じるのは気のせいでしょうか…
相性は大切ですね。
●十傳より→土地との相性もアリでありますね。ただ、自分の意志や希望とは別に、「これをしなさい」と求められているようにも思えるのであります。それは土地だけでなく、寿命もそうでありますけれど。
先生こんにちは。
朝方コメントを読み返して、何だか郷里ではなく…部屋で帰っちゃイヤ…って発言している様な…ちと、こっぱずかしいので再コメント致しますm(_ _)m
先生が郷里に帰られたら、ご実家の広いお庭に土日だけ少女Ａは出没しますm(_ _)m
何卒宜しくお願い致しますm(_ _)m
●十傳より→草取り、雪かきの労役を命じますです。
還る場所は家族や親族と一緒の、石の下だけは嫌だなあ。
還ったあとも、家族や親族に見舞われるのも億劫だなあ。
●十傳より→死んだあとのことは知ったことか、と考えないと疲れますです。
死後の世界は考えられませんが、長男の嫁としては避けて通れない問題でして。
ボケないうちに手をうっておかないと。
●十傳より→死後離婚とかあればいいかもですね。
東京からの強制送還のクダリ、胸が切なくなりました。十傳先生、シブいっす
十傳先生、是非教室を開講して下さい！また弟子はとっていないのですか?
●十傳より→スミマセンです。このコメント、別のフォルダーに紛れ込んでおりました。一人弟子がおりましたが、現在、大儲けしておりますです。
東京からの強制送還のクダリ、胸が切なくなりました。十傳先生、シブいっす
十傳先生、是非教室を開講して下さい！また弟子はとっていないのですか?
●十傳より→しばしお待ちくださいまし。講座開講の、だいたい目鼻がついてきましたので。