2014
03.22
03.22
「あたしの良さが分かったえん?」
と、潰し目玉焼きが言うのでありました。
日本の卵は格別なのでございます。
生卵も良いのでありますが、焼き途中であえて潰した目玉焼き。その生焼け加減の舌にとろけることといったら右に出るものはありますまい。
「ああ、やはりお前だよ」
こう答えるしかないのであります。
胃袋にとどく前に栄養が吸収されていくことがカラダで分かるのでございますです。
そして早春の香りの漬物。
「もっと強くお噛みになって…!」
と求められるまま奥歯で噛みしめますと、塩の甘さが口に広がりますです。
エウロッパのウンコの臭いから、いつもの親しみのある匂いのウンコに戻りつつありまして、それはこれら和食の力でございますでしょう。
「オノさんの大切さも分かったよ。外国に行ってしまって、日本にいない間、発狂しそうだったもの」
「そうかそうか」
私メは潰し目玉焼きと漬物をかわるがわる味わうのでございました。
トドメはジャガイモの味噌汁でございます。ワカメと少しばかりの油揚げ。
隠し味に玉ねぎ。
「でね、もしもよ、もしもオノさんが死んだらどーしようかって悩んじゃったよ」
静かに味噌汁のお椀を傾けつつ「簡単じゃないか」と口のはじで笑うのでございました。
「オレが死んだら、お前も死ねばいいだけの話じゃないか。悩むことなんてなにもないよ」
すべては覚悟でございます。
覚悟さえつけてしまえば、どんなことでもヤリトゲられるものであります。
潰し目玉焼きと漬物、そして味噌汁は、そんなことを私メに教えてくれたようであります。
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