2021
05.22

いただきました高級牛肉で老母のシナびた体に油を差したのでありました。
常ならば、大量の糸コンと安肉で「びんぼーすき焼き」なのですが、老母いわく
「生まれで初めでだぁ」
金持ちスキヤキなのでありました。

牛肉には思い出がございます。
銀座ジプシーが、大の牛肉好きで…いや野菜とかはまったく食せず、オオカミのよーに肉だけを喰う男なのでありました。

いちど環八沿いのしゃぶしゃぶ屋に連れて行ってもらったことがございます。たしか木曽路ではなかったかと記憶しておりますです。

ジプシーと、その情婦殿、若い女占い師、そして私メの4人でありました。
パフォーマンス占いとして、64本の蝋燭をケーキに立て、踊りながら扇で消し、残った火の付いた蝋燭の数で占うという、周易を下敷きにしたアイディアでありまして、それを若い女占い師にさせてはどーかという提案と、顔見世なのでありました。

女占い師はノリに乗って、「せんせーい、うれしい」と、夢グループのCMにでてくる保科なんとかさん張りにジプシーに甘えるのでありました。
「せんせーい、美味しいぃ~」と言いつつも、食ったふりをして私メの器に牛肉を回すのでありました。あとで彼女は菜食主義だと知りました。
「そーですかぁ」
ジプシーは鼻の舌をのばしっばなし。
とうぜん情婦さんはおかんむり。

さんざんに食って、若い女占い師はタクシーを拾って帰って行ったのであります。

タイヘンなのはその後でありました。
へそを曲げた情婦さんが、自分も自宅に帰ると言い出したのであります。
ジプシーが運転する日産セドリックの運転席と助手席で口論がはじまりましたです。
後部座席にいる私メのことは、かんぜんに置き去りでありました。
「マダム、帰っちゃいけない!」
「いえ、帰ります。帰らせてください」
自由が丘駅までの長い下り道、おふた方は押し問答。

突如、クルマに衝撃が走りました。
後部座席が左右に揺れました。
そして、今度は左に衝撃。ウィンドーに亀裂が走りました。
「やめて!」
情婦さんは頭を抱えておりました。

ジプシーが左右のガードレールに車体をぶつけつつ、「帰っちゃいけない」と駄々をこね続けるのでありました。
情婦さんは声を出して泣きだしました。「どーして、どーして」と。
もはや嫉妬どころではございません。

自由が丘の駅で、私メだけ降りましたです。
ウンコ色のセドリックの車体はデコボコでありました。後部のドアが開けられたのが奇跡なほどに。

当時、銀座ジプシーは80歳過ぎだったはずであります。

高級牛肉をみるたびに、ほとんど反射的にあの夜のことが思い出されるのでありました。

2021
05.21

ひとくちに家相と申しましても、まず「どこに建てるのか」という風水的なことがございます。川の流れや隆起した土地などを考慮するのでございます。
次に、家の形であります。真上からの形で、欠けとか張りとか。また横から眺めて屋根の形だの窓の広さなど。
そして家相盤に照らし合わせるのであります。家相盤は現在八局。2024年から九局に変わりますから、そのあたりを吟味する必要がございます。

幸いなことに、風水に関しては、相続して得た場所は、この点は問題ございません。地盤もシッカリしておるらしいし、高台のすこし低いところに位置していますから、まずは及第点。

家の形については、工務店に「全体的に龍をイメージしてほしい」と注文いたしました。
北西の部分を龍の頭とみなし、母屋を胴体としてどっしりと。イメージでありますから、工務店側としては大変だったかもしれません。

さらに軒をせり出して、太陽光線が直接に家の中に流れ込まないよーにと。そしてまた廊下を回廊風にたっぷりと取って欲しいと。
現代建築とは、いささかかけはなれた贅沢なつくりかもしれませんです。

が、奇門遁甲家相の、家相盤で引っ掛かっているのであります。
キッチンが大凶でございます。
「魔物が侵入する」
そういう欠点がキッチンに集中しておるのであります。
家相盤は、玄関の向きと、門の向きによって決定されますです。
ですから、この二つを考慮すれば、家相盤は自由自在となるのでございます。

が、自由自在なのは、あくまでも机上の理論。
どこかに欠点が生じるものであります。

それがキッチンに集中したというわけであります。

この凶相をどーするか。

骸骨で防げないだろうか。

そこで実行したのが、「鹿の骸骨」なのでございます。

画像の鹿の頭部を飾っているのは二階の一室であります。
キッチンの上に位置する十畳間。

おそらく…
「この鹿の頭蓋は壁から落下するだろう」
と予測いたします。
悪しき凶相を骸骨で封じるのでありますが、骸骨の方が負けてしまうであろーと。

そこで巨大な時計を配しましたです。

みなさまには、何のことかチンプンカンプンでありましょう。
それを知っていてUPしているのでございます。

申したいのは、悪い家相を、置物で封じたり、その部屋を何に使うか、書斎なのか物置なのか応接間なのかで、ずいぶんと被害を軽減することが可能であることをなんとなく申し上げたかったのであります。

2021
05.20

手入れをしなくても花は咲く時が来れば咲くのであります。
手入れをしても咲かない花もございましょう。

庭は、いま春の花から夏の花へと移りながら、滅亡の時を教えてくれているよーな気がしないではありません。
都会から離れ、新聞もTVとも無縁の生活を送っておりますが、それでも世の不審な不協和音は感じ取ってしまうのであります。

古い本を読み、時代遅れの音楽にいにしえを懐かしみ、草刈をし、汗にまみれたシャツを洗濯をし、部屋にこもるだけの生活をはじめますと、世の中の普通であることの、じつは異常であることが見えてまいりますです。

すると大切なのは、モノを美味しく料理する方法と、お女性のオッパイの掌にずしりとくる充実した重さと、季節の花々の艶やかさであることであるかなと思ったりいたします。

さいわいなことに私メには親友という存在がいないことであります。
親しい友がいたならば、とても苦しい時代に突入していると痛感することでございましょう。
ですから、
「ああ、お女性との偽りの恋をしたい…」
だけを考えればイイのです。

夏は…いや、秋も冬も春も、偽りの恋ほど楽しゅうものはございません。

季節に対応しないマジ恋愛ほど嘘っぽいものはないからであります。

それは、一人の時間を自分で満喫できるからでもありましょう。
雑草どもを刈り取り、土を掘って砂を敷き詰め、あるいは漬物を漬けることに全神経をつかい、思い出したように仕事に精力を傾け、ふと、
「お女性の匂いに包まれたい」
この気持ちの切り替えには、偽りという条件が必要であります。

湖面に浮かぶ透き通った風景のように、さざ波が立てば消えるような純粋な嘘の恋。風が吹けば、忘れてしまえるような清らかな嘘の恋。

ハッと我にかえると、そこにお女性はおらず、水面に映る花に語りかけていたことに気づくよーな偽りの恋が待っているよーな錯覚を、夏という季節は運んでくるのであります。