03.09
「わたしには秘密があるの」
運の悪い日は、どこまでもツキがなく、行く先々の店がぜんぶクローズ。あるいは予約でいっぱい。仕方なしにドアをおした中華料理屋で、彼女は、まるで挑むようなまなざしで「秘密」の二文字を告げるのでありました。
「知っていたよ、なんとなくだけど」
双眸は赤や青に変化し、しかし、そのような色の照明はあるはずはなく、それは心の揺れだと気づきましたです。しかも表情が少女になったり大人のお女性にも変化しているのです。
その秘密を知れば、魔のトライアングルで行方不明になった飛行機のよーに、彼女から抜け出せなくなるのだろうと予感するのでございました。
お女性の秘密ーーなんらかの傷を知った瞬間から、男は、その女性の魔法にかかるのでございます。
美人だけではうごきません。知性でもうごきません。そういうお女性がいたことすら、名前すらも忘れるのであります。たとえ肉欲を刺激するようなプロポーションの持ち主でも、心を動かされることは少ないのであります。
傷が必要なのであります。
傷を見せられた時、男はその欠落部分を補おうとして、気づいた時は深入りしすぎているのであります。
「距離をおいたほうがいいのかしら」
「どーして?」
路地を折れ、さらに曲がり、坂道をのぼり、外路灯がくらく舗道をにじませております。その、よわい光が、お女性の貝殻みたいな鎖骨に影をおとしております。
鎖骨の上にはくちびるが。白い歯の間から舌の細かな粒が濡れております。
「あなたがほしいわ」
目を鎖骨に戻しますです。
「いずれそーなる、秘密を知ったから」
「あなたがほしい」
ふたたび闇夜を歩くのであります。
「お昼はなにを食べた?」
「スープよ」
「えっ?」
「トマトのスープ」
いつもだね、とすこし笑い、通りに出て、赤い空車の表示をつけて走るタクシーを何台も見送るのでありました。
すり傷は、いやらしい感じがします
●十傳より→ですか。
大人のお話、相変わらずお上手な文体ですね
●十傳より→でしょうか。
小野先生、そういうのを白昼夢って言うんじゃなかったでしたっけ ?
●十傳より→白日夢ならですね。
「 あなたがほしい 」
言いたくても言えない言葉
●十傳より→でも、しぼりだすように言ってみると基盤が変わるのであります。
小野先生大変お世話になっております。
今日もお休みして、神社に行って福本銭を納めたり
お昼寝したり、のんびりしました。
が、先ほどまたもや家電が壊れ、朝は網戸も。
昨年9月頃から車、携帯、自分、今年に入って玄関の鍵、ドアノブ、
家電類、郵便物トラブルなど続いて、なんてこったい状態です。
お掃除、お墓参りはちゃんとやっているつもりです。
外の世界と自分の内側のエネルギーが摩擦でも起こして
いるのでしょうか?
今日壊れたジューサーは一月に買ったばっかりだったのに…(泣)。
●十傳より→パワーの出し口がないとそーなるのであります。
>「わたしには秘密があるの」
こういう出だしは一見、宇野鴻一郎ふうなのですが、
やはり宇野鴻一郎先生のスケベ小説から影響を受けたんですか ?
●十傳より→鯨神しか読んでませんけど。嵯峨島昭とか。
先生が楽しそうで何よりです。スープは卵入りですか?トマトって意外なところで汁物になってますね。甘酸っぱくて毎回口がびっくりします。
●十傳より→トマトと卵は料理の神様かもですね。
秘密や傷というのは不幸な事柄ですか?
彼に話してみようかな。
私って,,,,,実は,,,,,
不幸な話は得意なんですが、なかなか人にやさしくできません。やさしくしたいのに実際にはトゲトゲしくなります。やさしくなれる方法はありますか?
●十傳より→見返りを求めなければ、です。辛い料理を相手のために真心を尽くして作るかんじでしょーか。
トマトたくさん食べると、肌白くなります。
ダイエットスープに使い数ヵ月食べ続けたら
肌質が変わりました。
●十傳より→何事も実践しないと分かりませんですね。
僕は最近、物語を練るのに必要なものがほぼ揃ってきました。それに合わせて紛失物が増えたり不意の出費があったり。これも奇門遁甲の作用ですか?
●十傳より→気の精でありましょう。