2018
08.07

東京に夜風が吹きました。

忘れていた風であります。
仕事を終え、野田前総理がSPを引き連れて通っていたという焼肉屋で、たんまりと肉を食い、そこを出た不意の風でありました。

このまま夏が来年の夏まで続くのかと絶望していたところでしたから、風に提灯の揺れている風情に安堵したのでございます。

焼肉屋では、どこかで見たことのあるスポーツ界のおやじが、
「ボクシングは大変だ」
などと熱く語っておりました。
「辞めさせられる前に、日本ボクシングを五輪から外す策を立ててもいいのにな」

ボクシングだけでなくレスリングもすべて行き着くところは暴力団か強引なセールスマンだと昔から信じて疑わなかったので、むしろ、世間に一人で立ち向かっている会長さんに声援を送りたい気持ちでおりましたが、秋風のはじまりに、そういうニュースも遠く感じられ、前髪をなぶらせ事務所へと帰還するのでございました。

風は雨を連れてきまして、夜半過ぎには強い雨脚が部屋を包むのでありました。

お女性の髪の匂いを欲しているような自分に気づくのでございます。

髪の毛を五指にあらく巻き付けてみたいような。
かるいジャズをながし、お女性の髪の毛を指の腹でたしかめながら、雨音に耳を傾けてもイイよーな。

現実はそーは問屋はおろしませぬ。
焼肉屋で胃におさめたキムチがときおり吐息から漏れていることを自覚するだけでありました。