2012
06.21
06.21
冷凍庫に、お餅があったのでありますです。
昨年の暮れに、郷里の老母が送ってくれたものでした。
そして、牛蒡の切れはしも冷蔵庫からみつかりました。
心は、真冬に戻ったのであります。
「ああ、お雑煮を食いたい」
と思ったときには、牛蒡を削いでいたのでありました。
胃袋の隅々までしみいる美味さなのでした。
鶏肉の出汁が濃厚にきいてございます。
まだまだ足りず、トースターで餅を焼いて、お代わりを。
夏至のお雑煮も悪くありませぬ。
熱い食いモノが美味く感じるときは、どこか心が痛んでいるものであります。
人生すべて、なにもかも面倒臭くはなっていますが、これといって傷ついているとはおもえませぬ。
むしろ、誰かを傷つけているような気がしなくもないのです。
郷里の屋敷にぽつんとすわって夕餉をとっている老母をおもうのでありました。
きっと家の中は電気を薄暗くつけているのでありましょう。
線香の香りでみたされていることでありましょう。
「もう帰るの? お母さんがそんなにだいじ?」
なんて声が過去から聞こえてまいります。
「どーかなぁ」
とあいまいに笑った私メの声もまじっています。
二杯目のお雑煮を、しみじみと味わうのでありました。