2021
06.23
06.23
実家を建て直してから、そろそろ1年が経過しよーとしております。
あれほど悩ませていた家霊がまだ来ませんです。
以前ですと、隣の部屋とを隔てる襖から人の声が聞こえてきたりしていました。
また亡祖母の部屋が台所の奥でしたが、深夜に氷を取ろうと降りていくと、わずかに開いた戸から指だけが見えていたとか。
玄関で草履を脱ぐ音が聞こえていたのはしょっちゅうでありました。
叔母が若いころは、風呂に入っていたら、首に獣がワサワサと巻き付いたと、素っ裸で飛び出してきたことも。
風もないのに掛け軸が壁を打つ音とか、家鳴りなど日常茶飯事。
鏡におかっぱの少女が走り抜ける姿を目撃した者は数知れず。
それが、まったく、
「バタッとなくなった」
なのでございます。
廊下の曲がり角で、以前なら気配を感じたものでしたが、ぜんぜんであります。
そーなってきますと、いささか、
「さびしい」
少しくらい出てきても大丈夫なのに。
そーいえば、旧家を壊す話をしていた3年前の夏、老母が、亡祖母の悪口を喋っていたことがございました。
しとしと雨の降る夜でありました。
突如、赤い蛾が、暗がりの外から飛んできたと思ったら、鱗粉を散らしながら旋回して、老母のスカートの中に飛び込んだのであります。
「やんたごと、やんたごど!」
狼狽したことでございました。
ほろっても、ほろっても赤い蛾はスカートめがけて狂うのでありました。
あっはっはっは、私メは
「お祖母ちゃんだ、怒ってる、怒ってる」
笑ったら、蛾は雨の夜に飛び去って行きましたです。
語れば尽きることはございません。
つまりはお化け屋敷だったのでございます。
家を取り壊した前夜、柱の残った廃屋から異様な霊気を感じ取りましたが、それっきり。
キレイだけど魅力のうすいお女性のよーでございますです。