2021
09.18

震災前のことであります。
ですから10年以上も前のこと。

はじめての印税で、仔犬を買いまして、それがメスのヨークシャー。
本が売れれば良いと思って、名前は「ベスト・セラー」。

そのセラーが5歳になったとき、子宮を取るか、出産させるかと女獣医にせまられ、
「産ませます」
と決断して、出来たのが、この掌の仔犬。
名前はGO。

生後7日目あたりであります。

じつは、GOをセラーのおなかから取り出したのは私メなのでありました。

セラーが突如、夜の10時頃に、破水し、のぞいたら膣の底で黒い犬が動いていたのであります。
そこで、あわてて女医さんに電話したら、
「いま酔ってんの。だから無理」
とのこと。
「手順を言いますから、そのとおりにすれば大丈~夫♬」

新聞紙を用意し、ハサミと糸と針を見つけ出し、洗濯ばさみをポケットに入れ、
「準備出来ました!」
そのあとのことは記憶にございません。

血まみれの新聞紙の中で、セラーはグッタリ。仔犬は声も出さずに幼虫のように蠢いているのであります。

で、セラーは母親を放棄し、GOを見るなり逃げ惑うことになり、私メが搾乳したりしていたのであります。

GOの寿命は5年と数カ月。
ある日、病を得て、1か月苦しみ死んでしまいました。

断易の卦は、子孫化絶。

バカ犬でありました。
無駄吠えと記憶の悪さ。またその声が割れ鐘の如くで、ひどいものでした。

おそらく生まれたての際に、栄養が十分ではなかったのが原因かと。

私メの手も、まだお女性の手のよーに艶やかだったのであります。