2011
07.29
07.29
新聞紙に包まれたお酒をいただいたのでありました。
「その手には乗らないよ」
と思いつつ、しかし、新聞紙に包まれたお酒というのは、やはり美味かったことを思い出しました。山形だったかの、やはりいただきモノのお酒。これも新聞紙にくるまれていたのでありました。
新聞紙を剥ぐと、なんと非売品の酒ではありませんか。
非売品ではありません。
「非売品の酒」という名の酒でありました。
栓をスポンと抜きまして、グラスに注ぎました。
つんとくる日本酒独特のニオイ。夏には暑苦しく感じられますです。
が…、が、であります。
「旨い!」
唸りました。
あらためてラベルを眺めますと、19度もございます。
イイ女ぶった女が、本当にイイ女だったというような旨さであります。
久保田とひけをとりません。
やや度数が高めなのが、夏には辛いところですが、クセもなくするりするりと喉をすべっていくのでありました。
これは煙草をすわなくてはいけません。
いっぽんをしばらく指でもむようにあいぶしてから、おもむろに火をつけました。
グラスのなかの日本酒がゆれるのであります。
あいたいなぁ、とおもうのでした。
だれなのか、その対象をおもうよりさきに、あいたいという気持ちが先行いたします。
あいたいなぁ、という言葉の響きが、煙草の重さや、日本酒ののどごしと共鳴しあっているようであります。
「オノさんは、その人柄じゃ、幸せじゃないよね」
とむかしに言われたことをふと、思い出し、
「いやいや、ざんねんながら、じゅうぶんにしあわせです、すみませんねぇ」
と、つぶやくのでありました。