2021
09.21

2021年の中秋の名月であります。

月が目に染みるほど美しいと感じるのは老いた証拠かもしれません。
それとも心が弱っているためなのかも。

草花にも、それは言えること。
春の桜の花を見上げ、秋の桜葉の紅葉に吹かれ、しみじみしてしまうことは、若々しかった少年の頃にはございませんでした。

花鳥風月ほど退屈なモノはなく、それよりも、寒い曇天の教室で、生徒の誰かが、
「雪!」
いっせいに外に首を回すと、窓外で、その冬、はじめての雪が降っていたりするほうが、刺激的でした。
「冬だな、いよいよ」
教員が呟き、授業に戻るのですが、初雪の日は、心に不思議に充実感が湧いてきて、唾液も濃くなった気がするのでした。

しだいに年齢がかさみ、花見や月見をすることになり、
「花より団子」とか「月見団子」
を経て、花鳥風月へと老いていくのかもしれませんです。

さて、狂った1年も9カ月が経過いたしました。
風説にあおられ、政治にもてあそばれ、時代は一瞬にして様変わりし、へとへとに疲れている目には、今夜の月は、
「もう死のうか…」
などと語りかけているように見えているかもしれません。

猛威を振るったデルタ株。
それが今月にはいって急速に衰えを見せていることに不思議を覚えますです。
ワクチン接種の成果ととらえたい人々は多いよーですが、果たしてそーか。本当にそーか。変じゃないか。
来冬には北京の冬のオリンピック…。
なにやら、雲間からのぞく月のごとく、見えてくるものがございましょー。

コロナという太陽の影である月の光。
太陽は直視できませんが、月ならば色々と見ることができますです。

今夜の月よりも、昨夜の月の方が、美しく見えるのでございますです。

 

2021
09.20

ついに廃屋になったお家でございます。

まえは、家の中から野球のTV感染をしている笑い声が聞こえておりました。
その頃から衰退の兆しはございました。

だいたいにして野球など自分に関係のない選手どもを応援して、運気が上がるはずがございません。
大谷某かが、原爆投下国で選手として野球をしているそーですが、誘拐され、両腕でも失ったのであれば、手を叩いて喜べますが、大活躍している姿に応援することほど、自分の運気を下げる行為はございません。

だから、この世の大部分が不運なので、それでイイのですが。

スポーツだけでなく、すべてに言えることであります。
とにかく、運を上げたかったなら、TVを一切見ない決意が必要であります。
「ラジオなら良いですよね」
ダメであります。
「死ね!」
と言って切って正解。

さて、この家。
蔦が伸びだしたあたりから、口論の声が響き出しました。

フルオープンのスポーツカーがありましたのに、それが消え、ガレージは汚れだしました。

蔦が家を覆うに比例して、家族は生気を失っていったのでございます。
まるで蔦にパワーを吸われてしまったよーに。

私メは目撃しておりませんが、或る夜に、救急車がこの家の前で朝まで停まっていたとか。
その夜を境にして家の人たちを見かけないとも。

家相書には、蔦の話はございません。
が、原書に記されてなくても、蔦に支配され、呑み込まれ始めた家は、大凶と見るべきでありましょう。

「おぞっ!」
と寒気を覚える家が、ご近所にございましたら、しばらく観察してごらんあそばせ。
生きた家相学を学べることをお約束いたしますです。

2021
09.19

UCCの珈琲豆が冷蔵庫にございましたので味わいました。

そーして書庫をひらくと一冊のファイルが目につきましたです。
「おお!」
新大久保に住んでいた20代のころ、近くの古い雑居ビルに、「催眠術研究所」なる怪しげな教室があり、興味につられ通ったことがございます。
そのファイルでございました。

当時の新大久保は、まだリトル韓国ではなく、古い連れ込み旅館がたちならび、新宿のホステスさんらが住むアパートがひしめくよーに軒をつらねている異様な町でございました。

催眠術研究所の建物は、一階が性病科の診療所、二階が占い、異音のするエレベータで四階に、その教室があるのでありました。
講師は、ひとめで大学の助教崩れと分かりました。
よれよれの白衣と、東大メガネをかけ、いつも最前列の左側に、その男が身を持ち崩した原因であると見て取れるお女性が、薄笑いを浮かべているのでありました。

教室には七人ほどの受講生。
私メがイチバン年少でございました。

講義は二時間。
その間に受講生の一人一人に催眠術をほどこすのでした。

悲しいことに、なぜか私メは催眠術にかからないのでありました。
「まるで膣イキを知らない女のようね」
と、向かいに住むホステスさんたちがゲラゲラ笑いながら、私メの報告を聞くのでありました。

ホステスさんのボスが向かいに住んでいて、全裸の彼女が汗を拭きながら化粧をしていたら、台所からのぞいている私メと、ドレッサーで目が合い、
「いらっしゃい、こっちの部屋に」
そこから子分っぽいホステスさんも集まり、夢のような青春の一ページの日々が始まったのであります。

あるとき、ホステスさんの一人に講義で教えられたとおりに催眠術をかけたところ、ほんとうにかかってしまい、目が醒めなくなって焦ったことがございます。
あわてて助教崩れの講師を呼んで、解いてもらった記憶を思い出しましたです。

催眠術講座では、あまり得たものはございません。

けれど、珈琲を味わいつつ、こうしてファイルを読んでいきますと、
「そーだよな」
と頷ける個所がいくつかございます。

「普通の会話の二、三倍時間をかけてゆっくりと単調に、句読点では句切り、一、二秒の間を、術を施すべし」
などは、リモート講義で活用すべきところかもしれないのであります。

録画でチェックすると、早口になったり、声の抑揚があって、よく聞き取れない箇所が目立つからであります。

こんど時間を見つけ、新大久保を散策してみようか。
いやいや韓国人街になり、当時の面影は失われ、失望するだけだろう、とも思ったりするのでありました。