02.10
親指の付け根に、3cmほどの古傷がございます。
40年前の夏の日に、受けた傷であります。
激しく出血し、深夜、一人で救急病院に行きましたら、
「担当医がおりません」
中年のナースが、怪訝な目つきで、カッターナイフの傷から、血がタオルにあふれているのを見止めながら、診察を拒否されたのであります。
仕方なく、掌をひもで縛りました。
明け方まで新聞紙が血でいっぱいになりましたです。
1年ほどは力をこめますと、皮膚の内部で内出血いたしました。
が、いまではまったく忘れていた傷でありました。
それが、午前中に、不意に、まったく不意に、しくしくと痛み出したのでございます。
「今頃はオペの真っ最中だな」
赤信号で、握ったハンドルから、左手をはなしましたです。
霊あるいは気というモノを意識いたしました。
不思議な病気のお方でありました。
脳の神経が血管とあたり、それが激痛を伴うという病気。
いままで難病と言われるお客さんを、何人か完治させて驚かれたことがございます。
脳内の出来物とか、クルマ椅子のお方とか、眩暈に苦しむお方とか。
占いの兄弟子に、鍼灸師がおりまして、なんとなくコツのよーなことを耳学問として聞き及んでもおりましたし、それを独自に研究し、自分の体調に応じて行ってもおりました。占いは、「医」と「仙」を得て、完成するのでありますし。
痛風とかを軽減させることにも役立てておりました。もちろん鍼は使いませんが。
そのオペのお方にも、占いの他に、施術のよーなことを行ったのであります。
たぶん毛細血管が神経に触れていると断じられたからであります。
過去に、私メも、目の奥が痛んだことがあり、眼科医は毛細血管が異常に膨らんでいると判断。
「ははーん」
原因はチョコの食いすぎ。バレンタインのチョコの糖分が原因でありました。
そのお方もおそらくは…と。
激しいほど筋肉が固まっておりました。背中上部が、三層の筋の塊となって、首根を圧迫しておりました。
こういう場合はツボを押してもダメ。
時間をかけ、ていねいに筋の層をはがしながら血流をスムーズにしなければなりません。
大量の汗と共に、死臭に似た臭いも発散されましたです。
かなり激痛は収まったよーでしたが、その後の脳外科での診察は、毛細血管ではなく動脈。
それでオペに至ったのであります。
いつもなら鑑定を終えると無責任に、すべてを忘れる私メですが、
「掌の古傷の痛みは、あるいは…」
そのお方に気持ちを走らせました。
「痛め、いため、痛んでイイぞ」
麻酔で意識を失っているだろう、その個体からの「気」が空間を超越し、私メの古傷にすがって苦痛を分散しようとしていると考えるのも、たまには悪くございませんです。