2011
05.30

庭に出ましたら、ひそやかに赤い花がこぼれているのでありました。

風がつよく髪の芯をしごいてゆきます。ひとしきり吹く風がやむと、湖のほうで郭公鳥が鳴いています。

郭公鳥の声は、モリオカの初夏の音の名物です。

モノの話によると、郭公は喉から血を出すほどに恋のために啼くのだとか。いや、あれは不如帰でしたね。
なるほど、モリオカの郭公は、ひくい音で朝をふるわせているだけのような気がします。

葬式疲れか、花を見て、鳥の鳴き声をきいて、緑茶をあじわうことに安らぎを感じているのでございます。

目も耳も口も閉じて、見猿、聞か猿、言わ猿になってもいいでしょう。
それに加えて股間を押さえてヤラ猿。
そして、
弾丸のように飛び出た女の乳首を背中にかんじているだけで疲労がとれるかもしれません。

部屋にもどり、暖房に手のひらをかざしながら、なにか思索に耽りたいのでした。
たとえば、イノチのこととか、運命についてとか。
けれど、とおくの郭公の鳴き声に耳を傾けているばかりであります。