2014
01.23

『きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに
衣かたしきひとりかも寝む』
後京極摂政前太政大臣
一般訳は、
「こおろぎの鳴く寒々とした筵に、衣の片袖を敷いて一人寝をすることであろうか。なんとわびしき事よ」でありますが、これは真の濁情を知らぬ学者のおろかな机上の絵空事でございますです。
役職名からも、かなりの人物であります。その男がわびしく寝るなどということがありましょうか。

そう、彼は九条家の後継者、藤原良経でございますです。
歌の俊英であり、かの藤原定家のスポンサーであります。
彼の不幸は、その歌の天稟と、妻の急逝でありました。
妻は、源頼朝の女婿である一条能保のむすめでありました。この妻が死に、一時は世を捨て僧侶となろうとしたことさえあったとか。

●きりきりす→はたおり女。あるいは契の意味。ちぎりちぎりの意としてヤリまくるという情景が浮かび上がるのであります。

●霜夜→下余。つまり男根でございますあるいは下世で現世のこと。
●ひとりかも寝る→オナニーのこと。

当時の冬のしやわせは、男女が素っ裸で抱き合って寝ることでありましたろう。

良経は、最愛の妻を喪い、その悲しみを癒そうと、色々なお女性と情交を重ねたにちがいありませぬ。この夜もまた同様。
が、情事のあとはむなしいのであります。狂おしく求めたお女性のカラダが汚らわしいものに感じるのであります。

お女性は高いびきまでかきはじめます。
ああ、俺は何ていうことをしているのだ。愛しているのは死んだ妻だけなのに…と射精後の男特有の冷静さに戻るのでありました。

で、良経はそっと布団から抜け出しますです。
回廊を曲がると、お女性の高いびきの代わりにきりぎりすの音色。
その先の部屋に入りました。
凍えるほど寒いのであります。
しかし、その寒さがむしろ心地よくも感じられますです。

良経は、自分の衣をかけて横たわります。
そして、萎えた男根をしごきつつ、亡き妻を偲ぶのでありました。

天稟が不幸をもたらしたと先に書きましたが、それは、彼の歌の才能を妬んだ者が、彼を殺害したと言われているからでございます。
下手人は藤原の定家の手のモノという説も…。