2013
11.01

新緑の頃、まさか、このような無残な紅葉になるとは、モミジ自身も思ってはいなかったでありましょう。

今年の紅葉は猛暑と台風のために、やつれ果てておりますです。

紅葉を濁情に置き換えれば、つねに不完全な紅葉になるものであります。
「レーズンより白いです」
とムキになって主張したうら若きお女性を思い出すのでありました「年配の人とばかり付き合うから、そう思うんです…」と。

干し葡萄の話題からの会話でありました。
いや、温泉の話題だったかもしれませぬ。
「温泉に入るでしょう、でも、いつの間にか誰もいなくなるんです」
ほほう、と思っていたら、
「色黒の人は健康でうらやましい」

うわっ、そんなことは誰にも言ってはならないよ、バッシングを受けるからと、忠告し、それからレーズンのお話。
ふむふむ、たしかに、それは梅の花の色でありました。

これでは湯につかっているお女性たちは我が身の黒さを恥じて退散するのも無理はござるまい。

けれど、そのお女性だとて、濁情にやつれれば、40歳あたりから、今年の紅葉にならぬともかぎりませぬ。

白かろうが黒かろうが、やがては紅葉の年代を迎えるのは宿命と申すモノであります。
やつれた紅葉だとていとおしきものであります。

願わくば、濁情の熱気やつむじ風にヤラれたとしても、それでも慎ましやかさだけはキープしてもらいたいのでございますです。

「ケバくしたらいいよ」
「はぁ?」
「髪、赤とか黄色にさ」
「トデンさんもするんだったらね」
「こっちは経験済み」

紅葉の年代を過ぎ枯れ木の年頃に至っている私メの目に、今年の紅葉が痛いほど沁みるのでございますです。