2013
11.14

なんとエロチックな花芯でありましょうか。
羽毛につつまれた秘所のようであります。

ひとつの恋が枯れたとき、出会いから別れに至るまでの歳月と出来事を、一編の詩に結晶させることが出来たなら、数少ない恋として、美しさを保てるかもしれませぬ。

咲きながら腐臭を放つ濁情があり、その腐臭から逃れるために、白い恋に身をひそめることもございます。
「いつか純白のワンピを着せてみたいな」
「ウェディングドレス?」
「いや死装束」
腐臭に染まった心を、流し落とすために用意した、もうひとつの恋なのでありました。

好きになるなよ、私メを好きになってはいけない。
私メが好きになるのはいいけれど、おまえは私メをこれ以上好きになってはならない。

好きになると白い恋もまた同じように腐臭を発するからであります。
「ああ、お前もか…」
と落胆したくはないのであります。

愛しあう相性ではなく、一緒に死ぬ相性でいてほしかった。

大衆居酒屋の隅で、ふいに嗚咽するような不幸せなお女性。旅の漁村に着いたばかりなのに、もう帰路の悲しさを想ってしまうお女性なのです。だから笑い声に満ちたにぎやかな飲み屋の座敷の畳に涙を落してしまうのでありました。
その心の不思議をいつまでも守り続けてほしいのであります。
愛すれば謎が揮発し、倦怠に包まれ、花は汚れ、音もなく落ちてしまうのでございます。

腐臭を放つ濁情が絶した時、その花もはなびらを閉じたようでありました。

冬が来る前の冷たい雨の季節のバス停の舗道に落ちている濡れた花びらは夜には排水溝へと流されるのでありましょうが、心には、いつまでも白の記憶として彩られているのでございます。

恋の相談が多くなりましたです。
男のやさしさは暴力。男のつめたさは優しさ。
前回の十傳スクールで口を次いで出たセリフでございます。
忘れないように書き留めましたが、恋が去ったときに、この言葉の意味が破れた心の隙間から沁みこんでくることでありましょう。