2015
08.06

この一杯なのであります。

夕暮れにはまだ早い東海道線の車内で、燦々と差す夏の陽射しに瞳孔を細めつつ飲む缶チューハイの、いかに美味なることか。

喉をくすぐる清涼感のために大汗をかいて事務所に出向いたのであります。

盃一杯ほどの精液放出する獣の本能によって、一生を棒に振る男がおおぜいいることを思えば、缶チューハイの滴は清らかであり、しやわせの究極と申せますです。

暑さのせいで濁情も汚らわしく、純情もわずらわしく、断易や四柱推命や奇門遁甲のエッセンスを書き留めた手帳をめくりつつ、グビッ、グビグビッと喉を鳴らしてのむジワめく炭酸アルコールは、どれほど心を和ませるかわかりませぬ。

が、9パーセントの度数でなければいけませぬ。
間違って8パーセントや6パーセント果ては3パーセントのヤツを買ってしまうと、なんど舌打ちをしても後の祭り。ゴックンした次の瞬間に後頭部がグラリとこなければならないのであります。

人間には毒が必要なのでございます。
賞味期限が切れた食品を捨てる風潮がございますが、これではしやわせにもお金持ちにもなれませぬ。
自分の舌で傷んでいるかどーかを確かめ、たとえ傷んでいても、どれくらいで腹を壊すのか確かめることも必要なのであります。

やがてお盆休み。
バカンスの予定のないお方は、傷んでいるモノを舐めて、自分の体調を確かめることは、とても有意義であります。腹を壊したら寝ていればイイことでありますから。
ただ、腐った卵はお止めになることと、毒キノコは口にしてはなりませぬ。
そのほかの野菜だの白米だの魚の干物であれば、実験には最適。

そーやって自分の限界点を見極めるのであります。
お酒も、どの程度でほろ酔いになるか、饒舌になるのはどのくらいなのか、泥酔に陥るのはワインでは、ウィスキーでは日本酒ではと人体実験をしてみてくださいまし。

むろん濁情でボロボロになる限界を見つめるのもよろしいでしょう。
どーいう言葉で傷つくのか、なんにちセックスなしで大丈夫なのか、濁情依存になる出費はどのくらいなのか。

そして、やがて知るでありましょう。
朝、歯を磨く前のビールこそ、最高のしやわせなのだと。