2021
04.14

たとえば画像のよーな町裏をぶらつき、知らない店の外にたたずみ、どんな店なのだろーかと想像してから、おもむろにドアを開けるという動作が、旅先ではとても新鮮なのでございます。

自粛命令が一年以上に及び、自由な旅行をすることも困難となっておりますね。
わりあいに関係なくモリオカに帰省する私メでも、やや窮屈。
まぁ列車が空いているのは快適ではございますが。

けれど、キムラ満夫の旅は、かなりご無沙汰しておりますです。

仮名を名乗り、嘘の職業と嘘の出身、そして生年月日も変えまして、その命式通りの人格を演じての満夫旅は、これこそ旅の醍醐味という感じでありました。

労働者向けの木賃宿に泊まることもございました。
安いのですが、電気毛布を借りると五百円追加、風呂も五百円などと、
「騙しでは」
複雑な気持ちになったこともございます。

満夫旅でし忘れたことと言えば、木賃宿に泊まっている私メを、訪ねてくる麗しいお女性という設定でございましょーか。
宿の女将さんと朝食のあとの世間話をしていると、そこに場違い的なお上品なお女性が、私メを訪ねてくる二流映画の如き夢を、まだ果たしてはおりませなんだ。
無為な夢ではあります。バカバカしい夢でございます。

でも、旅行先では、似た出来事が、たまに発生するのも事実であります。
旅行の魔法とでも申しましょーか。

冬物を整理しよーとタンスを開けましたら、ワークマンで買ったビロードの襟の付いた紺色の作業服が。
「あんたの生まれは?」
居酒屋で隣のオヤジに訊かれた記憶が蘇ります。
「留萌ですよ」
すると、オヤジはへッという顔で、
「オレも留萌だ。で、どこの小学校だ?」
あれには参りました。

そういう思い出をほじくり返しつつ、しばらくはキムラ満夫はお休み中でございますです。