2024
01.12

神楽坂の裏通りには、時間が隔離された不思議な空間がございます。
タイムスリップしたよーな。

ガラス窓に、ずっとまえに死んでしまった主が、おいでおいでをしているのではないかと思わせる建物も残っているのであります。

私メも、ついつい20代ではないかと錯覚してしまいますです。

きっと浦島太郎とか、そんな物語は、このような時間に置き去りにされた場所に迷い込んだ時の体験が基になっているのかもしれません。

しかし、人の悩みは変わりません。
老病死別、愛別離苦。
大昔から坊主どもが口にする仏教用語。
四苦八苦。
四九八九=四×九で36。八×九で72。これらを足して108。108の煩悩。除夜の鐘の、鐘を打つ回数。
が、こんなお遊びを知ったとて、太古の昔からの悩みが解けるわけもなく。

私メが駆け出しの時に占ったお客さん。まだ高校生だったお嬢様の恋はどーなったのだろう。
もうきっと60歳に達しているはずだけど。

断易の師匠の鷲尾先生は、
「千人占って、はじめて易者になれる」
みたいなガックリするよーなことを言っておりましたが、いつしか私メもその数をかるく超えていることに気づきましたです。

しかし、鑑定の種類をカテゴリすれば、恋、お金、仕事、病気に分けられ、それらは人間関係という地獄から逃れることは出来ないのであります。迷い、絶望し、不信に陥り、人生を拗ねてしまう。悩みの底に残るのは「恨み」。自分を恨むのか、他人を恨むのか。
自分に原因があったとしても、それを「自業自得だ」と捨て置けぬところに、私メの仕事があるのであります。

が、時は疲れます。
いや、疲れぬ鑑定などありませぬ。
鑑定後、軽い吐き気を覚えた時、神楽坂の路地は、どことなく気持ちをリセットさせてくれる空間でもあるのでありますです。