2024
01.13

近所の無人の家でございます。
無人とは申しましても、手入れが行き届いておりますから、家族はどこか遠方にいて、業者に管理を頼んでいるのでありましょー。
それでも無人の侘しさはかくせません。
以前は、この家にも賑やかな子供がいて、笑い声や、叱られた泣き声が聞こえていたことでございましょー。

人相も同様でございます。
視力が落ちてから、ぎゃくに人相が分かるよーになるのは皮肉ですが、たとえば、うら若いお女性をみて、どこから老いが忍び寄ってくるかが見えるのであります。そして、人相の奥に、その母親の顔の原型を見ることもございます。

はんたいに、高齢のお女性がいらしたとき、ふと、彼女の若かりし頃の面影を見て、
「ずいぶんと男を泣かせましたね」
と褒めたたえたりもできますです。
もちろん「いまでも、まだまだですよ」とサービストークは忘れませんです。サービストークではなくホントのケースもあることを述べておかないといけませんですね。

で、ある時、キャップ帽の美人がいらしました。
美人なのに、泣いているような表情でした。
気になりつつも、生年月日で占い、断易で悩みを解明していきまして、さて、結論を…。

そのお女性の目頭から頬にかけて蒙色が滲んでいることに気づき、天眼鏡をかざしました。
するとお女性はキャップのつばでお顔を隠すのであります。
「まずまず」
と帽子を脱がせました。

そして、天眼鏡のライトを点灯。(私メの天眼鏡にはライトが付いているのであります。)
ありゃりゃ。
皮膚が荒れに荒れているのが見えました。

「昨夜はずいぶんとおタノシでしたね」
閨房のやつれが出ていたのでございます。
泣きぬれた顔は、じつは泣いていたのではなく、桃花煞の名残でありました。

そういうことが見えてしまうのが人相の欠点。
そして、結論を聞かぬまま、お女性は真っ赤なお顔をして帰っていきましたです。