09.10
モツの煮込みをば、発狂したみたいに食いたくなり、買い物に出かけたのであります。
その途中、「日時計公園」とかいうそばを通りかかりました。
立ち寄りましたら、原始的にもコンクリートの柱が立っているだけ。
影が落ちるところに、9時と12時の文字が刻まれたレンガが埋め込まれておりました。
腕時計の針は、10時40分あたり。
おやおや、日時計もちょうど、その時間を示しているではありませぬか。
偉いモノであります。
感動というには至りませぬが、感心した次第でございます。
その昔、まだチョンマゲをつけていた時代に、町娘と待ち合わせは、どーしていたのかと常々思ったりしておりました。
場所は、電車などはないので橋のたもとあたりでありましょう。
が、一刻は二時間の幅がございます。しかも季節によっては二時間より短くなる場合もありますです。
「明日の申の刻に、あの橋のたもとで待っているからね」
と約束しても、申の刻は午後三時から五時の間でありますです。
それよりも、「あの楠の影が橋の二番目の欄干にかかることに待ってるよ」
と約束した方が、待つ方も、気が楽であります。
雨だったら、それもききませんけれど。
占いでは、東洋も西洋も、出生時間を重視いたしますです。
生まれた時間を知っている人は、家に水時計などのあった身分でしょうから、よほどのお金持ちに限定されていたことでありましょう。
一般の人々は、だから出生時間を知らなくてもできる易とか手相に向かったのでございましょう。
そんなことを考えつつ、モツの煮込みを作るのでありました。
本当は三時間も煮込めばイイのでありましょうが、なにしろ残暑が厳しいのでございます。
圧力ガマのお世話になった次第。
こういう食いモノはシンプルが極上。
へんな工夫はいけませんです。
ただ隠し味に、玉ねぎを用いました。
トローンとした甘みが出ますゆえ。
食ってみると、なかなかイケますです。
先日、新宿でくった煮込みには及びませぬが、茅ケ崎の居酒屋のヤツよりは、よほど美味。
赤ワインを傾けつつ、平らげたのでございました。