2021
08.06

「どごさがに連れてってけで」
老母にせがまれましたので、
「では、あの世に」
仕事を中断し、ガレージからクルマをだしました。
モリオカの車外の気温は34℃。

渋民村…石川啄木の誕生したあたりに向かいました。
いつも思うのですが、
「ふるさとの山に向かいて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」
の歌の「ふるさとの山」は、どの山を指すのであろーかと、ふと疑問に思ったりいたします。

一般には岩手山、岩手片富士と呼ばれるだけありコニーデ型の休火山は、ある場所からみれば富士のお山に似ております。
が、渋民村からは、その形が崩れ、富士山とは異なります。が、県下随一の高山で、威厳は感じられるのでございます。

しかし、渋民村からは、岩手山とは反対側にそびえる姫神山こそが、ふるさとの山ではないかと思えるのでございます。

こーいう誤解っぽいヤツは日常でもありまして、占いをやっていると聞くと、宇宙人の存在も信じていると思われ、「宇宙からの交信では…」と語られたり、「人間が好きですよね」など膝を乗り出されることもしばしば。
「人間ではなくお女性だけが好きなんだけどなぁ」

渋民村から旧道を上りまして、旧道とは申しましても、側溝つきの舗装道路。ほとんどクルマの姿はないために、舗装がそのままの快適な道路でございました。
風力発電の風車まで来ましたが、それでも気温は32度。

しかし高原からの眺望は、時を超え、まだ自分が幼児ではないかの錯覚に眩暈させるのでございました。
どこまでもつづく夏空が展開しているのでございました。
「おらハ出ねよ」
老母はクルマの中でご満悦のご様子でありました。

高原からモリオカに戻るには二つのルートがございます。
あえて悪路を選びました。

舗装が突如として途切れ、20キロほど未舗装のデコボコ道が、ダムの湖周を巡っているのでございます。

私メのふるさとの山は、どの山であろーかと答えは出ているのに、思索に耽りたくなる林道なのでございました。