2021
08.08

モリオカに来て二週間ちかく経過いたしましたです。
いつもは一週間もすれば、
「ずいぶん伸びたなぁ」
爪をパッチンするのですが、この二週間の爪の延び方はのろいのであります。

のろいは呪いかぁ。
しみじみと我が指を眺め、「老いたものである」と心で嘆くのでありました。
白魚のよーな指だと、飲み屋でいわれたことがございますし、キムラ満夫を騙っての旅行では、配電工だよと職業を偽りましたら、「そんなキレイな指の職工さんはいない」と即座に見破られたことも。

それにしても爪の伸び方が遅い。
草取りのせいでしょーか。
食欲減退が爪の伸び方の速度を妨げているのでしょーか。

爪は古来、呪いの道具でございました。
髪などの陽毛や陰毛と同じく、切っても不滅の如く伸びることに、古代の占術家は着目したのかもしれませんです。

腕を断ち切れば、二度と生えては来ないが、爪をカットしても、数日で再生する。
髪の毛は再生しないお方もおりますけれど。

髪といえば、むかし、銀座ジプシー事務所に、出しゃばりオバさんがおりまして、
「うちの日本人形は髪がのびるのよン」
とか申しまして、その家に招かれたことがございます。
ガラスケースの童人形でありました。
「へぇ」
とか感動した素振りをしつつ、秘かにケースの木枠に爪で印をつけましたです。

秋になりまして、だから招かれてから四か月ぐらいたったあたりのこと、
「ムッシュ、大変、人形の髪が乱れているのよン」
当時、私メは調布。オバはんは三鷹。クルマで30分の距離でありました。
中古のいすゞ117クーペで向かいました。
童人形の髪が、もじゃくれておったのであります。
集まったオバはん易者の顔面蒼白。

ガラスケースの爪の跡がズレておりましたです。

「明日あたり、しかし、爪をカットしよーか」
しみじみ皺のよった指などを眺めるのでありました。