2012
10.16
10.16
仕事をしていましたら、どこからかキンモクセイの香りがしてきたのであります。
ドレドレと、つっかけで表にでたところ、近所の家々の庭さきから、黄色い花をもったキンモクセイがいまが盛りにたくさんの花弁をほころばしていたのであります。
私メが、キンモクセイを知ったのは、郷里を出てからであります。
モリオカでは、この花はあまり馴染みがないような気がいたします。
なので、どうしても秋の花だと素直に受け入れられないのであります。
チンチョウゲと混濁して、春の花として頭の中でひとつにくくられているのでございます。
秋にしては、あまりにも明るい匂いなのであります。
オカマっぽいのであります。
あるいは、美白し過ぎた熟女みたいであります。
が、この花が散れば、晩秋がそこに現れるのでありましょう。
夏を振り返りつつ、
「あの頃にもういちど戻りたい」
とでも無理を訴える花のような気がしてなりませんです。
タイムマシンがあったなら、過去に戻ってみたいとは思うものの、実際はもう若い頃に舞もどろうとは考えもできませぬ。
体力も衰え、食欲も失われ、老眼になりつつあっても、若い時代をふたたび経験したいとは絶対に思えないのでございます。
いまがイイというわけではありませんけどね。
キンモクセイの香りは、昼と夜の境目を失わせるほど香り高く漂っているのでありますです。
うちのワンコは潮の香りが大好きで
その香りを身に纏おうと
波打ち際の湿った砂に身体をズリズリとさせます。
橙色にひろがる金木犀の絨毯。
今 この瞬間 あたしが犬になったら…
絨毯に物凄い勢いでダイビング!
ズリズリズリズリ…ゴロンゴロン!
至福の妄想のひととき。
高校の帰り道、ふわっと香ってきて、
一緒に歩いていた友人に
「あたし、金木犀の匂い大好き!」と口走ったら
「あぁ、トイレの芳香剤の匂いね~」と返ってきまして…。
なんの話を誰にするのか…
そのチョイスの重要性に気付かされました。
その気付きの代償として? 戒めとして?
毎年この香りが嗅覚を刺激すると同時に
友人の言葉がリフレーンするのです。
●十傳より→クルマ用の、安い芳香剤にも、この香りがありますですよね。
大好きな香りです…
芳香剤なんて、所詮愚かな生物が作り出したもの…
その日の太陽の光や風向きによって香り方が変化して。
植物達のささやかな自己主張を感じる季節でもありますね〜
●十傳より→一斉に咲き香るところが、スゴイですよね。
オカマの匂い…
美白し過ぎた熟女…
どちらも、あまりにもピッタリくる表現で笑ってしまいました。
ほんとに先生はこういう感性が鋭いですね。
わたしも金木犀の匂い大好きだけど、
これからは、この甘ーい匂いに包まれながら、美白し過ぎの中年のオネェ様が浮かんでしまうんだろうなぁ…。
●十傳より→売春はダメでも売秋ってのは…言い逃れでありますか。ニュースで「被害の女性」ってんで注文していたら「68歳の女性」ということで、そのお歳でも「女性」という枕詞がつくくらいでありますから。奥深いものでありますですね。