2018
08.17

秋の味覚のチューハイが揃い始めました。
梨の羅・フランスのお味、マスカットのお味。
グビッとやりますと、過去の恋の記憶がほろほろとほどけてくるのでございます。

「もう8年以上も経っているのか」
チューハイの酔いが、さらに記憶をそのときだけ鮮明にするのでありました。

「恋だって、ははは」
そのお女性の高笑いもよみがえります。「恋だなんて、ちょっと違うんじゃないの」と。

まさか、まさか、杏里の曲の「あなた、わたしのマボロシに恋したの♪」を下敷きに笑っているんではなかんべね。
と当時は思いましたけれど、

「暑い暑い、まだ暑いよね」
薄目に開けた窓には、積乱雲がばかに青い空に展開していたところが思い出すわけで、となると昼下がりの情事だったかもしれませんです。
暑い暑いと上気した顔と、秋味のチューハイがモンタージュされまして、老身でも心が騒ぐものがございますです。

どの言葉も、
「そんなに貶めたいの?」
と棘のある意味に受け取るよーになりますから、
隙間からのぞく、ちいさな空を仰ぎながらチューハイを呷るよりほかはなく、
そして、ふたたび汗にまみれることになるのでございました。

「まだ、まだ駄目」
お女性は、果てた後の私メをおそれるよーに、乳房を粟立てながら、終了の時を繰り延べさせるのでありました。

ガラガラ声に喉をかすれたお女性が駅の雑踏に消えていく姿。
口の中に残った秋味のチューハイ。

黄昏の空には崩れた積乱雲。

と、記憶はときには深く、とくには淡くよみがえるのでございました。

 

2018
08.16

風が立ちました。

夏はしずかに傾いているよーであります。

灼熱のために白く漂白された東京の街にも、色彩が戻ってきたよーであります。
ぼやぼやしていると本格的な秋となります。

私メも、ボヤッとしていた「金持ち前夜祭Ⅱ」の準備を詰めなければならないのであります。

ご参加希望のお方に、そろそろ「赤紙」いわゆる「臨時徴収令状」を出さなければならないことを思い出した次第でございます。

まずは、事務所でお洗濯。
洗濯機のスイッチを入れるだけでありますけれど。

すべてお洗濯であります。なにもかもお洗濯であります。
「あー、ばかばかしい、ばかばかしい」
と呟きながらお洗濯をするのでありました。

で、ついでに、書庫を開いて奥にある古書類をチェックしていましたらーー

今を去ること35年前に、さるご高名な占い師の大家の特別講義に参加したノートが出てまいりました。
すっかり忘れていたヤツでございます。

当時はまったく訳が分かりませんでしたが、「なーるほど」とすらすら解読できるではございませんか。

男女を結びつけたり、引き離すことのできる秘法が記されているのであります。
四柱推命と奇門遁甲の応用技法というものでして、当時でも二日間で10万円の特別講義なのでありました。

「損した…」
と後悔しつつも、和綴じのノートに清書。
が、今となっては40万円を払っても惜しくはないであろうてな価値なのであります。

これも風立ちぬの一種かもしれませぬ。
熱い時にはわからなくても、時が経つうちにその価値を知るという意味で。

しかし、丁寧にまとめておりまして、当時の意気込みが分かろうというもの。

人も、このよーにありたいと思いますが、右を見ても、左を向いても、バカな年寄どもばかりであります。

2018
08.15

他人の自転車がひっくりかえっております。

病葉が風に舞い落ちて、
「夏も盛りか…」
とか思わせるのでありました。器満即傾とかなんとか言葉が浮かばせるのでありました。

鼻毛に白髪が混じったり、寝そべった乳房のわきの脂肪のたるみとか、それらは老いの始まりですが、この酷暑も底力が失われていることに気づいたりするのでした。

休みなく働き、本日は家におります。

そーしたら東海道線がストップしているニュースがありました。
人身事故が原因とか。
「ツイている」
と指を鳴らしましたが、最近、いろいろなところで人々が絶望して鉄道に飛び込んだりしているよーでありますです。
これも盛夏の特徴でして、変化する季節に生き物の心がおののき始める訳であります。

すると、それは占いの季節の到来とあいなりますです。

失恋、事業の失敗、借金、病気、未来への不安、それらが心を乱し、常識の枠内の知識及びアドバイスでは処理できなくなるまでに膨らんで破裂するのでありましょーか。

前を見ても、後ろを見ても、横っちょを見ても、心臓の空砲が頭蓋骨を震わせるほどの淋しさの恐怖を打ち鳴らし始めるのであります。

枯葉だけでなく、乾いた蝉やトンボの死骸が舗道で風に吹かれ、支えを失った心身が叫びだすのでございましょーか。

他人の自転車のわきの病葉。
晩夏の象徴の一つでございます。