2017
09.22

「たばこ、たばこ…」と酸素吸入を受けながら、指で煙草をする仕草をしながら死んだ大叔父のお墓の前に、煙草を供えるのでありました。

「どーせ死ぬなら煙草を吸わせればよかった」
とは言っても、そのときは助かる望みを抱いていたらしいので、
「煙草なんてとんでもない」
願いを無視したということであります。

その大叔父が死んで、はやくも40年。
この墓地が一番遠く、車でとことこ二時間ほど走らせなければならないのでありますが、こーして煙草を蝋燭台に供えると、心からホッとするのでございます。

誰も拝みに来る親族がいないのか、この大叔父は忘れられた存在でして、お盆に刺した煙草のフィルターがまだそのまま残っているのが悲しくも風情があるよーにも感じられるのでございます。

若い頃は北朝鮮で教員をし、引き揚げてからは大酒飲みでタバコ吸い。
民謡が得意で、NHKの、のど自慢で鐘二つ。
いっしょに津軽山唄をうたったものでしたが。

津軽のイタコに一族で出かけた時など、本当は祖父を出してもらいたかったのですが、
「ほんじつは、はるばる皆様がお出でなさると聞いたものでして…」
イタコの口からオバたちは推し量り「よいちろさんだ、与一郎さん」と失望の驚きの声が上がったこともございます。

科学と文明の社会にありながら霊界とも通じるこの世であります。
神々しいまでの頭脳といっしょにケダモノの下半身を持ち合わせる人間。
よいちろさんと煙草をふかしながら、私メの股間はグリッと鎌首をもたげたのでございます。
都会のお女性を想い出して。