2015
06.18
06.18
雨脚が過ぎた葉に水滴が残り、いくぶん明るさを回復した空を映しているのでした。
街角をおれるたびにフロントグラスにワイパーの拭きのこした雨粒がいろいろな色に濡れていた夜を思い出します。
夏至間近は黄昏が暮れきれず、私メとお女性はオープン・バールでレッドアイを傾けていたのでございます。
レッドアイとはビールをトマトジュースで割った軽い飲み物であります。
店のひさしの雨だれが、風もないのに、ときおり吹き込み、
「本降りになりそうだね」
と、黙ったままの私たちに会話の糸口をさしだしてくれるのでした。
けれど話は途切れ、
「また雨粒が」
「傘はないよ」
雨によって救われた沈黙も、束の間だけで雨音に包まれるだけであります。
それからの記憶はとんでタクシーのワイパーが降りしきる雨粒を左右にふりわけ、街角をおれるたびに、夜のあかりが私メとお女性の顔に様々な色に染めるのでございました。
チターと歌で恋ははじまり、涙と雨で恋は終る、というイタリアのコトワザを思い出しました。
庭の葉の水滴を映したカメラをしまおうとしたら、玄関先に蝶のさなぎをみつけました。
蝶も、雨をよけるように、ここまで這ってきたのでございましょう。
鳥の餌食となるかどうかは分かりませぬが、ここで潰すことだけはやめようと思ったのでございます。
雨の季節ははじまったばかり。
ステキな想い出を残してくださいませ。